東京大学と理化学研究所が共同研究での成果として、「水を高速で通すにもかかわらず塩を通さないフッ素化ナノチューブ」を開発しました。この開発は海水の淡水化に応用できるものとして期待されています。
内面をフッ素で覆った微細なナノチューブを開発したと、東京大大学院工学系研究科の伊藤喜光准教授や院生の佐藤浩平さん(現東京工業大助教)らが13日付の米科学誌サイエンスに発表した。塩水の場合、塩を通さずに水だけ通す効率が非常に高く、海水を淡水化する次世代水処理膜への応用が期待される。
発表のポイント:
◆内壁がテフロン(注1)表面のようにフッ素で密に覆われたナノチューブを超分子重合(注2)で開発した。
◆このナノチューブは塩を通さないが、これまでの目標であったアクアポリン(注3)の4500倍の速度で水を通した。
◆海水を高速で真水に変える次世代水処理膜の開発に貢献する。
開発されたフッ素化ナノチューブは下記の画像のような構造となっています。
なぜこの記事を取り上げたかというと、シンガポールは水問題を恒常的に抱えている国であるからです。大半の水はマレーシアからの輸入に頼っているのが現状です。必要不可欠なインフラである水を外国に頼っていることは国の安全保障としてもリスクが高いといえます。2018,2020年にはマレーシアから値上げの打診を受けています。(現在の契約は1962年から99年間の2061年まで。)
水問題の対策にあたっては、①大型貯蔵施設②再生廃水「NEWater」の利用③海水淡水化④排水規制の厳格化⑤節水の取り組み などを行っています。今回の東京大学の発表は③の海水淡水化に関わるものですので、開発がさらに進んでくるとシンガポールの水問題解消にもつながってきます。
シンガポールの観光名所であるガーデン・バイ・ザ・ベイでは、環境問題に関するコーナーも設置されており、雨水などを効率的に回収して循環使用できるように設計されています。
ちなみに再生廃水事業などのインフラについてはKeppel Infrastructure Trustも扱っています。
これから少しずつリオープンも進み、海外旅行をしやすい環境が戻ってきます。シンガポールに行く機会があれば、ぜひ大型貯水施設マリーナバラージやガーデン・バイ・ザ・ベイでの環境問題セッションも訪問してみてください。