新興国株式に対する温度感が高まっており、ゴールドマン・サックスも2023年は新興国株式が先進国株式をアウトパフォームするというレポートを出しています。さらにガンドラック氏もドル高のピークを理由に新興国株を推奨しています。
ドル高のピークが見えてきていることは新興国に追い風となるものの、財務面での脆弱性があるため、財務状況の悪化がどこまで広がっているのかというリスクサイドの見積もりも必要です。
新興国と言っても、BRICSと言われるものから、フロンティアと呼ばれる国々まで多くの投資対象国があります。先進国株式と異なり、マーケット自体の時価総額が小さいため、個別株投資よりもETFでの投資が推奨されます。
代表的な新興国株式ETFといえばVWOです。中国比率が約30%と高いので、今の情勢では敬遠されがちです。上位銘柄もTSMC,Tencent, Alibabaと中国テック系となっています。
セクターでは金融が21.9%、テクノロジー14.6%、一般消費財11.9%がトップ3、PERは11.15とここ一ヶ月の中国株の反騰により少しずつ上がっています。
新興国のEmerging Marketよりさらに途上国であるフロンティアマーケットに投資するETFはFM。比率トップはベトナムで21%となっています。次いでナイジェリア7%、カザフスタン6%となっています。
セクターでは金融が37%、不動産9.7%、素材9.3%がトップ3、PERは8.5と2022年を通して大きく下落したことで割安になっています。 VWOと同様、11月にボトムを打ち、大きく反発してきています。
注目新興国それぞれ単独で投資できるETFとしてブラジル、ベトナム、メキシコ、ポーランドの4カ国を取り上げたいと思います。この4カ国をピックアップした理由もそれぞれの項目で記載します。
ブラジル:EWZ
ブラジルは資源が豊富で、2022年のドル高環境においても好調を維持してきました。中国のロックダウン解除後、現在のインフレが高止まりした場合には鉄鋼などの素材、エネルギーに強みをもつ点が評価される可能性があります。
セクターでは金融が28%、素材19.9%、エネルギー16.6%がトップ3、PERは5.2となっています。
上位企業は世界的な資源開発企業のValeなどがあります。
ベトナム:VNM
中国ではロックダウン懸念や、アップルのiPhoneを製造している工場でデモがあるなど政局的な不安定さが拭えず、工場移転を計画するグローバル企業も増えてきています。その受け皿として候補に上がるのがインド、そしてベトナムです。ベトナムは韓国からの製造業下請けで実績もある点が強みです。
セクターでは不動産29.3%、生活必需品18.6%、一般消費財12.2%がトップ3、PERは9.96となっています。 不動産の比率がかなり高い点は注意が必要で、バブルになっている可能性もあります。
メキシコ: EWW
メキシコは米国の膝下ということで、米国からのアウトソースや下請け業務が多く見込める地理的な強みがあります。米中対立により中国の安い労働力を使えなくなった場合、メキシコの労働力へと流れることで恩恵を受けることになります。
セクターでは生活必需品29.9%、金融19.1%、通信サービス16.6%がトップ3、PERは10.7となっています。 メキシコは米国から自動車の下請け生産を行っていることもあり資本財セクターも14.4%と高めです。
ポーランド: EPOL
ポーランドはロシアから侵攻を受けているウクライナの隣国で、ウクライナからの避難民を多く受け入れています。ロシアによるウクライナ侵攻が長期化することで、避難者の方々がポーランドで仕事を行い、多大な労働力が今後供給されることが予想されます。
セクターでは金融がかなり高く38.9%、次いでエネルギー16.7%、一般消費財9.7%がトップ3、PERは4.2となっています。 取り上げた4カ国で最も割安なPERです。
これまで新興国ETFを見てきましたが、個人的には新興国株はガバナンスや財務面で懸念があり、割安のシンガポールREITや米国株式中心の投資スタイルを継続するつもりにしています。
新興国の中央銀行はジレンマに陥っている。経済成長が低下しているため金融状況の引き締めを継続できない一方で、高インフレのため利上げを停止することもかなわない。
その結果、金融政策エラーのリスクが上昇。ポーランドやコロンビア、インドや韓国などの国は、経済を落ち込ませずに消費者物価を抑制できる借り入れコストの正確な水準を見極めようと綱渡りの状態にある。
急激な金利上昇で英国は財政悪化が問題となり、さらには年金基金ファンドの莫大な損失によりBOEの緊急対応などに迫られました。
財務状況が脆弱な新興国でも、アジア通貨危機時のように同様の問題が起きる懸念もゼロではありません。新興国投資を行うにあたっては、このリスクを頭に入れた上での投資判断をすることが求められます。ポートフォリオの一部に新興国を組み入れる選択肢はありますが、比率を多くし過ぎないように注意が必要です。
サマーズ氏も高金利下での世界的な景気後退は新興国にとって逆風と考えているようです。