【銘柄分析】CapitaLand China Trust: SGX最大の中国フォーカスREIT

 

<概要・特徴>

SGX上場REITで最大時価総額の中国フォーカスREIT。CapitaLand系列でスポンサーとしては文句なしです。2006年上場と運用歴も長く、リーマンショックやチャイナショック、そしてコロナショックを乗り越えた実績のあるREITです。

中国の12都市にリテール11、ビジネスパーク5、物流施設4の計20の物件を保有しています。

2006年の上場以来、資産規模を着実に伸ばしています。現在はIPO時から7倍となるS$4.9 billionのAUMとなりました。 

売上や配当収益も2020年のコロナ時を除いて成長しており、2010年以降CAGR(年平均成長率)でNPI+11.3%, DI+9.1%となっています。新興国を対象とするREITであるため配当利回りも高く、2022/12/12時点で7.5%の配当利回りとなっています。

 

価格1.14 SGD 時価総額1,908 M SGD 配当利回り7.5% (12/12時点)

直近の2022Q3実績もコロナ以降回復基調で、YTDベースでNPIがYoY+7.5%成長。入替賃料上昇率も好調でショッピングモールなどのリテールで+4.9%, ビジネスパークや物流施設では+5.6%となっています。中国はようやくゼロコロナからの転換が見えてきており、2023年注目のセクターです。

 

<ポートフォリオ>

2019年まではショッピングモールなどのRetail中心のポートフォリオでしたが、2020年にビジネスパークを取得、そして2021年に物流施設を取得と分散化を進め、中国マーケットに投資する総合REITへと変貌を遂げました。

REIT Synposiumでもビジネスパークと物流施設にさらに注力していく旨をCEOがコメントしていました。

稼働率はいずれのセクターも高く、Retail 96.7%, Business Park 94.3%, Logistics 96.6%となっています。

セクター別ではRetailが最大で69.2%、ビジネスパーク25.7%、物流施設5.1%という割合です。さらにこの3つのセクターから生活必需品関連などのEssentialセクターとテクノロジーやイノベーション関連のHigh Growthセクターに分けてポートフォリオを管理しています。現在Essentialセクターが31.3%、High Growthセクターが21.8%となっています。2020年以降に取得を開始したビジネスパークや物流施設は今後も拡大し、それに伴いHigh Growthの比率も上昇して行くことが予想されます。

収益ベースでAsset比率を見ると、Retailで78%、New Economy(ビジネスパークや物流施設)は22%となっています。地域別では北京がトップで38.9%,次いで広州14.7%, 長江デルタと呼ばれる上海・蘇州を含むエリアが14.5%となっています。

 

アセットクラス別のポートフォリオを確認してみましょう。

ショッピングモールなどリテールは11物件7都市に展開。その内約半分は北京で収益を上げています。稼働率はこの一年高い水準を維持しています。直近は96.7%となっています。

 

ビジネスパークは5物件3都市の展開。収益ベースでのトップエリアは蘇州で47%を占めています。占有率はこちらも一年間高い水準を維持しており、直近はやや下がって94.3%となっています。

 

最後に物流施設。4物件4都市に投資しています。エリアは分散されており、トップは上海の36.8%。稼働率はこの一年97%近辺で、直近では96.6%となっています。

 

 

<テナント・リース、財務状況>

テナントとのリース契約状況は5年である程度分散されているものの、まだまだRetail中心ということもあり2023,2024の2年間で約60%を占めます。

中国は日本と同様世界でも少数派となった金融緩和路線で金利上昇圧力は強くないのですが、CapitaLand Chinaは借入金の大半はシンガポールドルでの調達となっているため、71%を固定金利でヘッジしています。Gearingは39.3%とレバレッジを抑えているため、シンガポールドルの金利上昇に伴うマイナスインパクトは比較的抑えています。借入金の平均金利率も2.81%と低水準に抑えています。この点は大手スポンサーであるCapitaLand系列である強みといえます。

借入金の返済時期は上手く分散されており、借り換えに伴うリスクを抑えています。2023年末までに返済期限を迎えるものは20%程度です。

 

<成長戦略>

今後の戦略としてNew Economy関連資産の取得にさらに注力し、Retail 30%, New Economy 30%, Commercial/Integrated Development 40%という構成を目指していきます。中国の都市でも北京上海などのTier1,2を中心に新規物件取得を進めていきます。

 

最後に過去5年の指標を確認しておきましょう。PBRベースではコロナ時を下回る割安水準で、この5年で最も低い数値です。それに伴い配当利回りも高い水準となっています。この数値は2022年11月初旬のデータで、習近平新体制になり、中国株など関連アセットが大きく売られた時期であったためかなり低くなっています。1ヶ月ほど経ち、今は割安水準も修正され一時期10%近くあった配当利回りも7%台まで戻しています。配当利回りで8%台に乗ってくると買い場と見てよい水準といえます。ただ中国はかなり特殊なマーケットであり、習近平体制は経済にフレンドリーな環境といえないため、政治リスクには注意を払う必要があります。