ARK Invest: 破壊的イノベーション銘柄の利益分析手法

ARKが投資している破壊的イノベーション銘柄はアーリーステージのものが多いため、GAAPベースでのEBITDAでは利益が出ていない銘柄が多いです。しかし単純にそうとは言い切れないという反論も含めて、ARKが投資判断を行うにあたってのアーリーステージ銘柄の分析手法(調整後EBITDAの算出方法やロジック)をTasla投資の成功事例を参照しながら解説しています。

  • ARKは将来のprofitable, unprofitableな成長企業を見極めて投資している。ARKが投資している企業は短期的な利益ではなく、長期的かつ多大な利益上げるためのプラットフォームや資本へ投資を行っている。そのため、GAAP EBITDAでは利益が出ていないように見える。
  • GAAP EBITDA:アーリーステージ企業の評価でUSGAAPベースのEBITDAは適切でない。R&Dなど先行投資費用が多くかかるため、SBC(stock based compensation)費用などを除いたNon-GAAPで判断する必要がある。テスラですらGAAP based EBITDAで利益を出したのはたったの5年前。

  • Measuring Profitability:上記を加味した上でAdjusted EBITDAを計算し、コアビジネスの収益性を判断している。その結果ARKが投資している85%の企業がプラスのadjusted EBITDAとなっている。
  • R&D費用は長期的な価値を作る源泉で、アーリーステージ時には多大な費用となるが、売上の増加と共にその売上比率は下がっていく。
  • Adjusted EBITDAを計算する上で考慮すべき項目はR&D,S&M(Selling & Marketing),SBC(Stock Based Compensation), Diferred Revenue, Asset Impairmentなど。これを考慮した上でもマイナスEBITDAとなっている銘柄としては、バイオテック関連のVerve Therapeutics, CRISPR,TuSimpleなど。

  • Tesla profitability: adjusted EBITDAでプラスになり始めたのは2015年でS&P500に採用される5年前。ここから売上が大きく上昇し、R&Dの売上比率は大きく減少した。 軌道に乗るとコスト比率は大きく減少し、Gross marginは大きく上昇していく。

  • 売上成長とバリュエーションは連動していない。:ARK投資対象銘柄はナスダック100よりも売上成長率が高く、調整EBITDAベースでのマルチプルもナスダック100より20%割安となっている。(ARKK:売上成長率31%, マルチプル12, ナスダック100:売上成長率16%, マルチプル15)
  • Cash burn rateが低マルチプルの要因となっている。しかし、ARKは調整EBITDAを使用する理由と同じ理由で、アーリーステージの銘柄にこれを当てはめるのは間違いであると考えている。
  • 直近18ヶ月は低成長ディフェンシブ銘柄に軍配が上がったが、長期的な売上成長と利益性を持つ破壊的イノベーション銘柄が今後優位となる。

ARKはアーリーステージである破壊的イノベーション銘柄のコアビジネスの利益性を分析するために調整後EBITDAを使っています。一方、通常のS&P500などにリストされるような大企業の株式分析では、EBITDAが主流であり、バフェットも「調整済みEBITDAは企業側にとって都合のいいように改ざんされている数値であり、投資の判断指標としていない」ことが知られています。実際アーリーステージ企業ではストックオプションなどで人件費を支払うことが多く、これを調整済みEBITDAに含めないのであれば、意味のある数値かどうか疑問です。SBC費用は今支払われていないだけであって、将来は費用として必ず発生する(しかもかなり膨大な金額になることが多い。)ものであり、蓋を開ければ、人件費を賄えていないビジネスである可能性もあり得ます。ARKのスタイルもわかりますが、通常の会計・財務分析の観点からは、やや行き過ぎている部分もあるように感じました。この記事では要点しか記載していないため、ぜひ原文のレポートも読んでみてください。

引用:Disruptive Innovation And Profitability - ARK Funds