【書評】2030 半導体の地政学

--2023/8/26更新

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半導体はもはやインフラと呼ばれるぐらい生活に欠かせないものとなりました。

見渡せば、スマホ、PC、自動車、などあらゆるものに半導体は使われています。半導体不足のニュースを目にした人も多いと思います。

さらに昨今のロシアへの制裁や、トランプ政権時代から続く米中対立において、半導体が地政学的にも重要であるということを感じました。

「2030 半導体の地政学」は地政学と絡めた形で各国の現状・視点をまとめた良書になっています。

 

本記事では、

①米国 ②中国 ③台湾(TSMC) ④日本 

の4ヵ国の視点で要所となる部分を記載しました。

加えて、シンガポールについての記載も補足しておきたいと思います。

 

<分野別市場シェア>

  市場規模
(10億ドル)
米国 台湾 欧州 日本 中国 韓国
半導体チップ(最終製品) 473 51% 6% 10% 10% 5% 18%
設計ソフト 10 96%          
要素回路ライセンス 4 52%   43%   2%  
半導体製造装置 77 46%   22% 31%    
ファウンドリー 64 10% 71%     7% 9%
製造後工程 29 19% 54%     24%  
ウエハー 11   17% 13% 57%   12%

 

<米国>

・半導体チップやライセンス、製造装置など主要技術のほとんどは米国が握っているものの、ファウンドリーや製造後工程の部分は抑えることができていない。

・2019年に半導体は国防にかかわるため、ハーウェイなど中国企業への経済制裁。

・TSMCなどをアリゾナ誘致し、生産拠点を国内に設ける。

・NVIDIAによるArm買収の話で上流を抑える可能性があったが、欧州の抵抗により買収断念。欧州としてはArm、ASMLはなんとしても守りたい。

 

<中国>

・米国によるハーウェイ等の制裁により、自国生産の強化へ方向転換

・ファウンドリー、製造装置分野が弱く、政府から半導体業界へ多額の補助金などの施策を打つ。2021年現在、AMEC,NAURA,SMICなどの企業が成長著しい。(まだまだ最先端レベルではない。)

・半導体の市場規模は世界最大のシェア35%(米国は22%。欧州・日本はそれぞれ8%程度)

・米国は鎖国を進めているが、中国は自由貿易を進めており、TPP申請,RCEPの枠組みでデータ貿易の主導権を握ろうとしている。

 

<台湾>

・ファウンドリーの世界シェア70%を誇る。そのほとんどはTSMCによるもの。

・TSMCは米国政局による要望もあり、アリゾナ工場進出。ただし最先端技術ではなく5ナノの工場。通常ではコストに見合わないこともあり、多額の補助金を得ての進出となる。

・地理的に中国に近く、中国軍事拠点が近い点はリスク。

 

<日本>

・世界Topシェアはウエハーのみ。半導体製図装置に強み。

・東大とTSMCが協業プロジェクトを実施。

・政府によるTSMCの誘致:最先端ではなく旧世代の半導体製造工場。

・NTTによる光トランジスターのIOWN(Innovative Optical and Wireless Network=アイオン) によるゲームチェンジの可能性。より高速で5GやIoTのエッジコンピューティング時代にもマッチする。

 

<シンガポール>

・海底ケーブルが集中(デジタルシルクロード)し、GAFAのデータセンタ多い。

・金融や貿易のイメージがあるが、半導体製造が多い。GDPにしめるエレクトロニクス業は8%その8割が半導体。

・シンガポール経済開発庁(EDB)が法人税減免などサポートし企業誘致。

・マイクロン、グローバルファウンドリーズなども製造拠点を置く。

 

 

今後社会が発展していくなかで、半導体は長期的なテーマとして重要度を増していきます。半導体に興味を持った方、より詳細が知りたい方は、ぜひ本を手にとってみてください。