シンガポールREITの直近パフォーマンスを、Kenny Loh氏の4月8日付レポートで振り返りたいと思います。
FTSE ST REITインデックスは先月末の734.05から747.06と、+1.77%上昇という結果になりました。3月前半はシリコンバレー銀行破綻などの金融不安から指数が下げる展開となりましたが、後半は落ち着きをみせ、1ヶ月間の値動きは小幅なものとなりました。チャートの形は三角持ち合いとなっており、5月あたりには大きく動く可能性があります。
各銘柄のファンダメンタルズを見ていきましょう。
一年以上緑色のセルが多い状態が続いており、ファンダメンタルズの観点では割安銘柄ばかりであることがわかります。
<Price/NAV>
Price/NAVの欄が株式でいうPBR相当の指数で、割安度を示しています。
*NAV=net asset value(純資産総額)
ST REITインデックスのPrice/NAV は0.82と先月レポートの0.84から下落しました。コロナショックやリーマンショックレベルの割安圏となっています。
Price/NAVの上位5銘柄は
Most overvalued REITs :based on Price/NAV
- Parkway Life REIT (Price/NAV = 1.71)
- Keppel DC REIT (Price/NAV = 1.49)
- Mapletree Industrial Trust (Price/NAV = 1.25)
- Mapletree Logistics Trust (Price/NAV = 1.23)
- Capitaland Ascendas REIT (Price/NAV = 1.21)
下位5銘柄は
- Most undervalued REITs :based on Price/NAV
- Lippo Malls Indonesia Retail Trust (Price/NAV=0.23)
- Manulife US REIT (Price/NAV = 0.38)
- EC World REIT (Price/NAV = 0.41)
- Prime US REIT (Price/NAV = 0.41)
- ARA US Hospitality Trust (Price/NAV = 0.45)
となっています。
<配当利回り>
ST REITインデックスの配当利回りは8.4%と先月の7.7%から大きく上昇しており、過去の歴史的水準から見てもリーマンショック時に相当するような高い水準となっています。高配当銘柄として申し分ない利回りといえます。個別でみても40銘柄中17銘柄は利回りが7%を超えており、うち9銘柄は10%を超えています。シンガポール国債とのイールドスプレッドも5.56%と先月の4.21%から大きく上昇し、金融不安の影響が不動産市況に及ぶのではという警戒感が見て取れます。過去水準からみて5%以上のスプレッドとなる機会は相当に少なく、買いの好機と判断できるレベルと言えます
Highest Distribution Yield REITs (ttm)
- Manulife US REIT (22.62%)
- Prime US REIT (21.13%)
- Lippo Malls Indonesia Retail Trust (19.38%)
- EC World REIT (15.61%)
- Keppel Pacific Oak US REIT (15.06%)
米国関連リート高い利回りが目立ちます。2022年Q4以降は一貫して米国リートが弱く10%を超える利回りが続いており、現在は20%超えとなっているものまであります。Manulife US REITはLTV比率の規定上限により、物件売却を進めており、今後配当額が大きく減額され配当利回りも大きく下がることが見込まれます。
株式と同様、配当利回りが高ければ良いというものでもないので、配当利回り単独での投資判断は危険です。配当の持続性やなぜ投資価格が下がっているのかを考慮し、他の指標も勘案しながら、投資判断を行う必要があります。
- Highest Gearing Ratio REITs
- Manulife US REIT (48.8%)
- Elite Commercial Trust (45.8%)
- Lippo Malls Indonesia Retail Trust (44.6%)
- Suntec REIT (42.4%)
- Prime US REIT (42.1%)
Manulifeが突出して高いGearing Ratio(LTV)となっています。全体でのGearig Ratioも37.54%と高い傾向になっています。
個別銘柄のヒートマップは下記となります。
時価総額の大きい大型REITの大半がプラスである一方、小型REITのマイナスの大きさが目立ちます。
他にもシンガポール10年債や米国10年債との比較チャートなど、盛りだくさんのコンテンツになりますので、ぜひ元サイトもチェックしてみてください。
参照:Kenny Loh's blog
Singapore REIT Monthly Update (April 8th, 2023) - My Stocks Investing