シンガポールREITの直近パフォーマンスを、Kenny Loh氏の1月1日付レポートで振り返りたいと思います。
FTSE ST REITインデックスは先月末の723.18から725.07と、+0.26%のやや上昇の結果となりました。レンジ下限まで下げたところで下げ止まっている形となっており、ここから反発できるのか下にブレイクしてしまうのかという重要な局面となっています。
各銘柄のファンダメンタルズを見ていきましょう。
緑色のセルが多く、ファンダメンタルズの観点では割安銘柄ばかりであることがわかります。
<Price/NAV>
Price/NAVの欄が株式でいうPBR相当の指数で、割安度を示しています。
*NAV=net asset value(純資産総額)
ST REITインデックスのPrice/NAV は0.80と先月レポートの0.80と同じ水準となっています。コロナショックやリーマンショックレベルの割安圏となっています。
Price/NAVの上位5銘柄は
Most overvalued REITs :based on Price/NAV (vs 先月のPrice/NAV)
- Parkway Life REIT :Price/NAV = 1.58 (vs 1.61 prev.)
- Keppel DC REIT :Price/NAV = 1.29 (vs 1.33 prev.)
- CapitaLand Ascendas REIT :Price/NAV = 1.15 (vs 1.15 prev.)
- Mapletree Industrial Trust :Price/NAV = 1.15 (vs 1.14 prev.)
- Mapletree Logistics Trust :Price/NAV = 1.09 (vs 1.10 prev.)
下位5銘柄は
- Most undervalued REITs :based on Price/NAV (vs 先月のPrice/NAV)
- Lippo Malls Indonesia Retail Trust :Price/NAV = 0.34 (vs 0.34 prev.)
- Prime US REIT :Price/NAV = 0.47 (vs 0.55 prev.)
- ARA US Hospitality Trust :Price/NAV = 0.49 (vs 0.53 prev.)
- Manulife US REIT :Price/NAV = 0.55 (vs 0.54 prev.)
- EC World REIT :Price/NAV = 0.56 (vs 0.56 prev.)
となっています。
<配当利回り>
ST REITインデックスの配当利回りは7.90%と12月レポートの7.67%からさらに上昇し、7%超え水準で高止まりしています。高配当銘柄として申し分ない水準といえます。個別でみても40銘柄中19銘柄は利回りが7%を超えており、うち9銘柄はなんと10%を超えています。シンガポール国債とのイールドスプレッドも4.69%と先月の4.61%からさらに拡大している状況です。4%以上のスプレッドは買いの好機と判断できるレベルと言えます
Highest Distribution Yield REITs (ttm)
- Manulife US REIT (17.67%)
- Prime US REIT (17.21%)
- Keppel Pacific Oak US REIT (13.48%)
- United Hampshire US REIT (12.82%)
- EC World REIT (12.74%)
米国関連リート高い利回りが目立ちます。2022年Q4は一貫して米国リートが弱く10%をゆうに超える利回りが続いています。Manulife US REITのLTV比率が規定上限まで近づきつつあるなどレバレッジについての懸念材料も出てきています。
株式と同様、配当利回りが高ければ良いというものでもないので、配当利回り単独での投資判断は危険です。配当の持続性やなぜ投資価格が下がっているのかを考慮し、他の指標も勘案しながら、投資判断を行う必要があります。
- Highest Gearing Ratio REITs
- Manulife US REIT (49.0%)
- Lippo Malls Indonesia Retail Trust (43.7%)
- ARA Hospitality Trust (43.3%)
- Suntec REIT (43.1%)
- United Hampshire US REIT (42.1%)
Manulifeが突出して高いGearing Ratio(LTV)となっています。全体でのGearig Ratioも37.2%と増加傾向になっています。
最後に、個別銘柄での12月ワースト20を見てみましょう。米国関連リートが上位となっており、米国オフィス3銘柄は-15%以上の燦々たる結果でした。期待されていた年末ラリーも米国株同様に全くなく、2022年年間を見ても、-50%超と半値以下となっています。
個別銘柄のヒートマップは下記となります。
米国関連リートでの下落は目立つものの、シンガポール国内の比率が高い銘柄は比較的安定しており、指数も下げ止まりが見られます。米国やドイツのCPIからもインフレ減速の傾向は見えており、金利上昇一服となればリートへの逆風は和らぎます。2023年はどんな相場になるか、しっかり追って行きたいと思います。
他にもKenny氏のインタビュー動画や、シンガポール10年債や米国10年債との比較チャートなど、盛りだくさんのコンテンツになりますので、ぜひ元サイトもチェックしてみてください。
参照:Kenny Loh's blog
Singapore REIT Monthly Update (January 1st 2023) - My Stocks Investing