【銘柄分析】Manulife US REIT: Class-Aオフィス物件を保有するSGX初の米国リート

--2022/11/7更新--

<概要・特徴>

米国オフィスマーケットに投資するManulife US REITは2016年にシンガポール証券取引所に上場した最初のUS Office REITです。現在は3銘柄が上場しており、その中では最大の資産規模となっています。

価格: 0.495 USD 時価総額: 879M USD 配当利回り: 10.3% (2022/9/19時点)

直近の1H FY2022 決算ではNPIは57.6 M USDでYoY+2.8%と伸びているものの、DPUはYoY-3.3%と減少しています。Afterコロナでback to Officeの傾向が米国では強まっているため、ここからいかに盛り返せるかがカギとなります。Manulife US REITの戦略として、co-working officeのテナントを導入したり、ビジネスパークの取得にも力を入れ始めています。

米国オフィス市場のマクロ環境については下記の記事でまとめています。

 

<ポートフォリオ>

2022年6月末現在で12のオフィス物件を保有しています。占有率は90%と米国Class A物件平均の80.7%を上回っています。

保有物件のある都市毎の特徴は以下のスライドにまとめられています。

これらの都市は米国のテック企業が進出しているエリアをカバーしており、Manulife REITはそのエリアを狙って投資をしています。以下はテック企業のオフィスで今やシリコンバレー外でのdemandが高いです。

コロナ以降New normalとなったハイブリッドのワーキングスタイルに沿ったオフィスの形を提供するため、物件のリポジショニング戦略を掲げています。リポジショニングの柱は"hotelisation"と"flexible space"です。

まずhotelisationのほうについて

従来のオフィスに加え、ルーフトップバーやラウンジ、コラボレーションを促すようなイベントスペースやカンファレンスルームなどを設置しています。これらにより賃料の最大30%増を見込んでいます。

 

Flexible Space戦略のほうでは、最近、Co-workingスペースのFlex by JLLともパートナー契約を結んだことが象徴となっている通り、シェアオフィスなどを増やしていきます。

 

Manulife US REIT has signed a management and licensing agreement for Flex by JLL to take up 15,407 square feet of office space at 500 Plaza Drive in Secaucus, New Jersey. Flex by JLL is JLL’s enterprise-grade flexible space solution. Its space at Plaza will offer flexible private offices, coworking space, meeting rooms, team suites and virtual offices.

 

<テナント・リース状況>

テナントのセクターもしっかり分散されています。

 

金利上昇対策として借入金の85%を固定金利でヘッジをしています。金利1%上昇に対しての配当へのインパクトは-0.079 centsです。2021年末に物件を取得したことによりGearingはやや高めの42.4%となっています。投資家保護の観点でSGXで定められているGearingの上限は45%であることから、Manulife US REITはほぼ上限に近い水準で、追加の借入金を得ることが難しい。つまり、物件を新規取得するには、増資となる可能性が高く、そうなると株価にはマイナス要因となってくるので注意が必要です。

 

また、米国マーケットのREITに直接投資するのではなく、シンガポールREIT(SGX上場)のUS officeリートセクターに投資する最大のメリットとしては税制面があります。通常のUSリートと異なり、源泉税がかからずに配当を受け取ることができます。さらにシンガポールREITにかかる法人税も減免されるため、より多くの配当を受けることができます。これがUS officeリートが他のシンガポールREITと比較し高い配当利回りを誇っている理由です。配当収入を目的とした長期投資家には有り難い限りですね。

参照:Manulife US REIT IR