シンガポールREIT各銘柄の2022Q3決算が出揃い、最新のファンダメンタルに基づいたKenny Loh氏の11月13日付レポートがリリースされました。
FTSE ST REITインデックスは先月末の737.01から731.39と、-0.76%低下する結果となりました。一見大きな変動はないように見えますが、月中まで暴落、月後半にかけて大きくリバウンドと高いボラティリティを伴う月となりました。11月に入って以降は月末の高値圏を維持した推移となっています。
各銘柄のファンダメンタルを見ていきましょう。
緑色のセルが多く、ファンダメンタルズの観点では割安銘柄ばかりであることがわかります。
<Price/NAV>
Price/NAVの欄が株式でいうPBR相当の指数で、割安度を示しています。
*NAV=net asset value(純資産総額)
ST REITインデックスのPrice/NAV は0.81と先月レポートの0.83よりもさらに割安になっています。コロナショックやリーマンショックレベルの暴落で、なかなか見られる水準ではありません。
Price/NAVの上位5銘柄は
Most overvalued REITs :based on Price/NAV (vs 先月のPrice/NAV)
- Parkway Life REIT :Price/NAV = 1.75 (vs 1.76 prev.)
- Keppel DC REIT :Price/NAV = 1.34 (vs 1.24 prev.)
- Mapletree Industrial Trust :Price/NAV = 1.19 (vs 1.27 prev.)
- Ascendas REIT :Price/NAV = 1.15 (vs 1.13 prev.)
- Mapletree Logistics Trust :Price/NAV = 1.10 (vs 1.06 prev.)
下位5銘柄は
- Most undervalued REITs :based on Price/NAV (vs 先月のPrice/NAV)
- Lippo Malls Indonesia Retail Trust :Price/NAV = 0.36 (vs 0.41 prev.)
- ARA US Hospitality Trust :Price/NAV = 0.52 (vs 0.53 prev.)
- Manulife US REIT :Price/NAV = 0.54 (vs 0.61 prev.)
- BHG Retail REIT :Price/NAV = 0.57 (vs 0.61 prev.)
- EC World REIT :Price/NAV = 0.57 (vs 0.60 prev.)
となっています。
<配当利回り>
ST REITインデックスの配当利回りは7.58%と10月レポートの7.30%からさらに上昇し、7%超え水準で高止まりしています。高配当銘柄として申し分ない水準といえます。個別でみても40銘柄中18銘柄は利回りが7%を超えており、うち9銘柄はなんと10%を超えています。シンガポール国債とのイールドスプレッドも4.17%と先月の3.76%からさらに拡大している状況です。4%以上のスプレッドは買いの好機と判断できるレベルと言えます。
Highest Distribution Yield REITs (ttm)
- Manulife US REIT (13.97%)
- Prime US REIT (13.53%)
- EC World REIT (12.46%)
- United Hampshire US REIT (11.92%)
- Lippo Malls Indonesia Retail Trust (11.61%)
先月同様、米国関連リートの高い利回りが目立ちます。中国やインドネシアを主戦場とするEC WorldやLippo Mall以上に先進国リートの利回りが高い状況はなかなか見られません。8月以降連続して0.75ppsの大幅な米国金利上昇により、投資価格が大きく下落したことが要因です。過去US office関連REITが利回り10%を超えてきている時は買い場となるケースが多く、先月に引き続き、打診買いを進めてよい水準だと考えています。
株式と同様、配当利回りが高ければ良いというものでもないので、配当利回り単独での投資判断は危険です。配当の持続性やなぜ投資価格が下がっているのかを考慮し、他の指標も勘案しながら、投資判断を行う必要があります。
高配当銘柄の多くは海外市場をターゲットにしている銘柄が多いため、REIT Synpoisumのこちらの記事でもビジネス状況など記載しています。ぜひ参考にしてください。
米国リートについては下記記事でもまとめています。ファンダメンタルズはしっかりしていることが伺えます。
最後に、個別銘柄での10月ワースト20を見てみましょう。Month%の列で見て取れるように約半数は-5%以上となっているものの、最終週での反騰で下げ幅を大きく縮小したことがWeek%の列でわかります。11月-12月は米国株など株式にとってパフォーマンスが良いというアノマリーがあり、リートもその流れに乗って好調であることが多いです。年末に向けてのラリーに期待できる最終週の動きであったと言えます。
特に、個別銘柄では強かった銘柄と弱かった銘柄の2極化が顕在しており、比較的大型REITが強い傾向となっています。
総括して、弱いマーケット市況が継続しており、暴落レベルの水準まできているという点では前回と変わりません。しかし、11月に発表された米国CPI低下によるインフレ鈍化の予兆が見えてきており、米国金利上昇一服に伴うマーケットの反転が期待できる状況になってきています。前回から変わらずの見解となりますが、REITは配当を狙って長期投資に向いているアセットです。減配リスクが少ない安定銘柄が高い利回りになってきており、長期視点ではかなり投資妙味がある水準で、買い始めてよいレベルです。シーズナリティの観点からも年末にかけて追い風となっていますし、ビジネス状況・財務状況をしっかり分析し、買い準備を進めていきましょう。シンガポールREITインデックス指数が低調な水準であるため、シンガポールREIT全体を買うETFを検討するのも、継続して良い選択肢であると思います。
こちらの記事で推奨銘柄について記載しています。
シンガポールREITのETFについてはこちらを参照。
他にも10月にあったREIT関連ニュースや、シンガポール10年債や米国10年債との比較チャートなど、盛りだくさんのコンテンツになりますので、ぜひ元サイトもチェックしてみてください。
参照:Kenny Loh's blog
Singapore REIT Monthly Update (November 13th 2022) - My Stocks Investing