シンガポールREIT市場全体での9月パフォーマンスの振り返りです。まれにみる最悪の月間パフォーマンスで、指数は暴落しました。シンガポールREITの専門家Kenny Loh氏の10月2日レポート分の要約を見てみましょう。
FTSE ST REITインデックスは先月末の792.62から737.01と、-7.02%低下する結果となりました。長期でのチャートは8月にブレイクしたボックス圏内をさらに下堀りし、下降トレンドの下限近くまで一気に下落しています。コロナショックの時と同等の酷い暴落ぶりです。
*直近2年間のチャート。暴落の激しさがわかります。
*こちらはCOVID19の暴落時まで遡った期間のチャート。コロナショックに引けを取らない暴落っぷりです。
各銘柄のファンダメンタルを見ていきましょう。
緑色のセルばかりでファンダメンタルズの観点では割安銘柄が大半です。
<Price/NAV>
Price/NAVの欄が株式でいうPBR相当の指数で、割安度を示しています。
*NAV=net asset value(純資産総額)
ST REITインデックスのPrice/NAV は0.83と先月レポートの0.91よりもさらに割安になっています。コロナショックやリーマンショックレベルの暴落で、なかなか見られる水準ではありません。
Price/NAVの上位5銘柄は
Most overvalued REITs :based on Price/NAV (vs 先月のPrice/NAV)
- Parkway Life REIT :Price/NAV = 1.76 (vs 1.99 prev.)
- Mapletree Industrial Trust :Price/NAV = 1.27 (vs 1.35 prev.)
- Keppel DC REIT :Price/NAV = 1.24 (vs 1.39 prev.)
- Ascendas REIT :Price/NAV = 1.13 (vs 1.18 prev.)
- Mapletree Logistics Trust :Price/NAV = 1.06 (vs 1.13 prev.)
下位5銘柄は
- Most undervalued REITs :based on Price/NAV (vs 先月のPrice/NAV)
- Lippo Malls Indonesia Retail Trust :Price/NAV = 0.41 (vs 0.46 prev.)
- ARA US Hospitality Trust :Price/NAV = 0.53 (vs 0.63 prev.)
- EC World REIT :Price/NAV = 0.60 (vs 0.65 prev.)
- OUE Commercial REIT :Price/NAV = 0.60 (vs 0.66 prev.)
- IREIT Global :Price/NAV = 0.60(vs 0.67 prev.)
となっています。
<配当利回り>
ST REITインデックスの配当利回りは7.30%と9月レポートの6.58%から大幅上昇し、7%を超えてきています。高配当銘柄として申し分ない水準といえます。個別でみても40銘柄中18銘柄は利回りが7%を超えており、うち8銘柄はなんと10%を超えています。シンガポール国債とのイールドスプレッドも3.76%と先月の3.5%からさらに拡大している状況です。
Highest Distribution Yield REITs (ttm)
- Prime US REIT (12.91%)
- Manulife US REIT (12.33%)
- EC World REIT (11.94%)
- Elite Commercial REIT (11.40%)
- Keppel Pacific Oak US REIT (11.27%)
先月同様、米国関連リートの高い利回りが目立ちます。8月9月と連続して大幅に米国金利が上昇し、投資価格が大きく下落したことが要因です。過去US office関連REITが利回り10%を超えてきている時は買い場となるケースが多く、打診買いを進めてよい水準だと思います。
株式と同様、配当利回りが高ければ良いというものでもないので、配当利回り単独での投資判断は危険です。配当の持続性やなぜ投資価格が下がっているのかを考慮し、他の指標も勘案しながら、投資判断を行う必要があります。
高配当銘柄の多くは海外市場をターゲットにしている銘柄が多いため、REIT Synpoisumのこちらの記事でもビジネス状況など記載しています。ぜひ参考にしてください。
米国リートについては下記記事でもまとめています。ファンダメンタルズはしっかりしていることが伺えます。
最後に、9月の暴落がどれだけすさまじかったかというのを個別銘柄でのワースト20を見てみましょう。Month%の列で見て取れるように-10%以上がざらにあり、英国の欧州リスク震源地であるElite Commercialは20%超えの下げです。いずれの銘柄も9月最終週の下げがすさまじかったことがWeek%の列でわかります。
総括して、8月9月と弱いマーケット市況が継続しており、暴落レベルの水準まできています。インフレや米国金利上昇だけではなく、英国年金基金やクレディ・スイスのマーケットショックなど欧州発の金融システムリスク問題まで出てきています。正直、マーケットのセンチメントは最悪レベルと言ってよいでしょう。しかし先月もコメントしましたが、REITは配当を狙って長期投資に向いているアセットです。減配リスクが少ない安定銘柄が高い利回りになってきており、長期視点ではかなり投資妙味がある水準で、買い始めてよいレベルです。シーズナリティが最悪の9月が過ぎ、10-12月はシーズナリティの観点でも上を目指していける時期です。ビジネス状況・財務状況をしっかり分析し、買い準備を進めていきましょう。ここまでマーケット全体が暴落してくると、シンガポールREIT全体を買うETFを検討するのも良い選択肢です。
こちらの記事で推奨銘柄について記載しています。
シンガポールREITのETFについてはこちらを参照。
他にも9月にあったREIT関連ニュースや、シンガポール10年債や米国10年債との比較チャートなど、盛りだくさんのコンテンツになりますので、ぜひ元サイトもチェックしてみてください。
参照:Kenny Loh's blog
Singapore REIT Monthly Update (October 2nd 2022) - My Stocks Investing