シンガポールREIT マーケット市況 6月レポート

シンガポールREITの直近パフォーマンスを、Kenny Loh氏の6月6日付レポートで振り返りたいと思います。

 

FTSE ST REITインデックスは先月末の735.33から714.12と、-2.88%下落という結果になりました。好調な米国株や日本株とは対照的に大きく下落し、下落トレンドのチャートとなっています。

 

最新の2023Q1決算の結果を反映した、各銘柄のファンダメンタルズを見ていきましょう。

一年以上緑色のセルが多い状態が続いており、ファンダメンタルズの観点では割安銘柄ばかりであることがわかります。

 

<Price/NAV>

Price/NAVの欄が株式でいうPBR相当の指数で、割安度を示しています。

 *NAV=net asset value(純資産総額)

ST REITインデックスのPrice/NAV は0.78と先月レポートの0.80から下落したものの、コロナショックやリーマンショックレベルの割安圏となっています。

Price/NAVの上位5銘柄は

Most overvalued REITs :based on Price/NAV 

  • Parkway Life REIT (Price/NAV = 1.64)
  • Keppel DC REIT (Price/NAV = 1.49)
  • Mapletree Industrial Trust (Price/NAV = 1.20)
  • Mapletree Logistics Trust (Price/NAV = 1.17)
  • Capitaland Ascendas REIT (Price/NAV = 1.14)

 

下位5銘柄は

  • Most undervalued REITs :based on Price/NAV
    • Lippo Malls Indonesia Retail Trust (Price/NAV=0.20)
    • Prime US REIT (Price/NAV = 0.27)
    • Manulife US REIT (Price/NAV = 0.31)
    • Keppel Pacific Oak REIT (Price/NAV = 0.38)
    • ARA US Hospitality Trust (Price/NAV = 0.43)

となっています。

 

<配当利回り>

ST REITインデックスの配当利回りは9.08%と大きく上昇しており、過去の歴史的水準から見てもリーマンショック時を超えるような高い水準となっています。高配当銘柄として申し分ない利回りといえます。個別でみても40銘柄中20銘柄は利回りが7%を超えており、うち9銘柄は10%を超えています。シンガポール国債とのイールドスプレッドも6.05%と先月の6.25%からはやや減少したものの高水準となっており、不動産しじょうへの警戒感が見て取れます。過去水準からみて5%以上のスプレッドとなる機会は相当に少なく、買いの好機と判断できるレベルと言えます。

Highest Distribution Yield REITs (ttm)

  • Prime US REIT (31.95%)
  • Manulife US REIT (27.94%)
  • Keppel Pacific Oak US REIT (19.02%)
  • Lippo Malls Indonesia Retail Trust (14.67%)
  • Elite Commercial REIT (14.66%)

米国関連リートがTop3を占めており、減配が必須と言える水準の利回りとなっています。Manulife US REITはLTV比率の規定上限により、物件売却を進めており、今後配当額が大きく減額され配当利回りも大きく下がることが見込まれます。さらにこの1ヶ月はPrime US REITが決算を大きく外し投資口価格が大幅下落したため、Manulife US REIT以上の利回りに見えてしまっています。

株式と同様、配当利回りが高ければ良いというものでもないので、配当利回り単独での投資判断は危険です。配当の持続性やなぜ投資価格が下がっているのかを考慮し、他の指標も勘案しながら、投資判断を行う必要があります。

  • Highest Gearing Ratio REITs
    • Manulife US REIT (49.5%)
    • Elite Commercial Trust (46.6%)
    • Prime US REIT (43.7%)
    • Lippo Malls Indonesia Retail Trust (42.9%)
    • Suntec REIT (42.8%)

Manulifeが突出して高いGearing Ratio(LTV)となっています。全体でのGearig Ratioも37.98%と高い傾向になっています。

 

個別銘柄のヒートマップは下記となります。

時価総額の大きい大型REITの大半がマイナスとなっており、セクター全体が弱かったことがわかります。

 

米国REITが弱い展開が続いていますが、ようやく6月FOMCで利上げの停止が予想され、金利上昇局面の終盤まで来ました。REITは利上げ停止から利下げへの局面で価格が上昇する傾向があります。先行している日本株や米国株の上昇トレンドのように、シンガポールREITも今回の長いベアトレンドから上昇へと転じる局面が近づいてきています。この先5年-10年を見れば良い買い場であったと言えるでしょう。

 

参照:Kenny Loh's blog

Singapore REITs Monthly Update (June 6th, 2023) - My Stocks Investing