【書評】会社四季報の達人が教える10倍株・100倍株の探し方 渡部清二

四季報を20年以上読破している渡部氏 (複眼経済塾 代表取締役 )の四季報に関する書籍です。今回kindle unlimited 対象ということもあり読んでみました。2016年に出版された本書と、2023年に出版された「10倍株の転換点を見つける最強の指標ノート」という2冊があり、それぞれ補完しあう内容となっています。

 

まず、「会社四季報の達人が教える10倍株・100倍株の探し方」の方についてですが、こちらは渡部氏の考える株式投資手法と合わせて、四季報のどの部分を参照していくかを実例と交えて詳細に解説されています。

20年以上、毎号2000ページ超の会社四季報を
長編小説のように読んだ達人が教える
お宝株、大化け株が見つかる!

四季報を使った10倍株(テンバガー)、100倍株を見つける原則を解説しています。過去の四季報の誌面を使用して、原則や方法を検証し、実践的な見つけ方を解説しているので、四季報のどこを見れば、10倍株・100倍株が見つけることができるかが、わかります。著者は20年以上にわたって、会社四季報を読破しています。本書で解説されるのは、その経験の中から見つけた10倍株、100倍株を見つけるノウハウです。そのノウハウを身につければ、必ずしも隅から隅まで読み尽くす必要はありません。会社四季報はもちろん、会社四季報オンラインも活用して、効率的に10倍株、100倍株を見つけましょう。

【主な内容】
プロローグ
四季報読破で見つけた10倍株/ハンバーガーではなくテンバガーに注目/会社の先輩からの叱咤激励「四季報、全部読んでこい!」/四季報は投資の武器として最強/読み始めて4冊目で20倍株
第1章 【事例編】四季報から見つけた10倍株・100倍株
 1 変化・転換点への「気づき」から始まる―機関投資家とも対等になれる
 2 1964年東京オリンピックで10倍株になった意外な銘柄からわかること
 3 「株価が何倍になるか?」を考えるとき、重要なのは時価総額
 4 株主優待狙いで取得の銘柄が10倍になった
 5 「何十年ぶり」の最高益銘柄に注目
第2章 【実践編】10倍株探しの4つのポイント
 1 10倍株を探すポイントに気づいたきっかけ
 2 ポイント① 成長性を示す「増収率」が高い
 3 ポイント② 稼ぐ力を示す「営業利益率」が高い
 4 ポイント③ オーナー経営者で筆頭株主
 5 ポイント④ 上場5年以内
 6 増資や株式分割を行っている
 7 PSR、PER、PBRの高さは気にしなくてもいい
 8 買いは分散投資。売りはストーリーで決める
 9 10倍株を探すときのポイントまとめ
第3章 【事例編】10倍株はこうして見つけろ
 1 RIZAPグループ――変遷をたどって大化けの背景を知る
 2 ソニー――元祖ベンチャーから投資の極意を知る
 3 トヨタ――約13万倍!?日本一の“大化け”株
 4 TOKYO BASE――2年で10倍達成。100倍株になるか?
第4章 お宝銘柄をみつけるための常識・非常識
 1 「PERが低い割安株=よい株」は本当か
 2 決算発表直後と四季報発売前の「空白期間」にお宝銘柄を発見
 3 相場が大きく下落したときの銘柄選別とは
 4 右肩下がりの銘柄から見つけろ
 5 10倍株を探すときに役立つ投資格言はどれだ?
 6 中興の祖に注目!
 7 政策・国策から大相場の初動に気づく
 8 大化け続出の低位株がなくなる? 
第5章 四季報を読む&使うための技術
 1 読破の時間がない人のための10倍株を探せる読み方
 2 成長株、優良株、割安株……、分類を見極める
 3 四季報に載っている株価チャート欄の活用法
 4 会社四季報ONLINEのスクリーニング活用術
番外編 気になったコメント おもしろコメント

発行が2016年とやや古いですが、当時どのような判断で銘柄を選別していたか、実際にどのような株価推移となったかがわかります。また10倍株については”成長株”をターゲットとしており、過去大きく成長したソニーやトヨタなど今や歴史とも言えるフェーズでの解説も記載されており、普遍的に活用できる内容となっています。

  • 注意してみているポイント
    • 世の中や会社が大きく転換するコメント
    • 突然伸びだす売上高などの業績
    • チャートの転換
  • 四季報をパラパラめくって上記(コメント、業績、チャート)を一日5分確認するところから始めるのでOK。ちょっとした気づきが10倍株につながる。
  • 株を「低成長株、優良株、急成長株、市況関連株、業績回復株、資産株の6つに分類。それぞれで注目するポイントは異なる。10倍株を狙いやすいのは急成長株。
  • 成長株を選ぶポイント
    • 増収率20%以上。"4年で売上が2倍"が基準。売上成長が一番大事
    • 営業利益率10%以上
    • オーナー経営者
  • PSR,PERは成長株では気にしない。マーケットの期待値の表れとして考える。割高と考えていると買うタイミングを逃す。
  • 割安株ではカタリストが重要。万年割安では意味がない。カタリストには機体選考による"理想買い相場"や"テーマ相場"、と業績拡大による"現実買い相場"がある。政策や国策テーマに注目。

上記はポイントだけですが、実例のところでは四季報内での具体的なコメントなど、かなり詳細に記載されているため、一読をおすすめします。

 

次に「指標ノート」の方は、日々のマーケット指標を毎日チェックし、日経新聞を活用して自分の気づき等をメモしておくことの重要性について記述されている本になっています。

会社四季報を100冊読破し、日経新聞の切り抜きを25年間行い、指標ノートを9000日以上記録し続けた投資のプロが贈る「三種の神器」の投資術!

1日5分、11項目の数値と毎日の気づきを書き込むだけで、10倍株のヒントが見えてくる。
秘伝のノート術を全公開!

この本を読むと、優良銘柄を見出す盤石の投資スタンスを獲得できる!
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(1)「日経新聞」から各数値と気づきを「指標ノート」に書き留める

(2)これはと思える記事を切り抜く

(3)気づきを得た銘柄について「会社四季報」で調べる
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テンバガーの達人直伝!
これが、転換点を見つける8つのキーワードだ!
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(1)ぶり(○○年ぶり、○○期ぶり など)
(2)年 (○○年以来 など)
(3)初 (初期、史上初、世界初、業界初 など)
(4)最 (最高、最低、最長、最多、最大 など)
(5)新 (更新、新技術、新たな取り組み など)
(6)発 (発見、発明、発表、日本発 など)
(7)脱 (脱○○、脱退 など)
(8)改 (改革、改正 など)
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【目次】
序章:「投資の三種の神器」は四季報、日経新聞、そして指標ノート
第1章:転換点を見つける「指標ノート」の作り方
第2章:変化をつかむ「日経新聞」の読み方
第3章:「指標ノート」と「日経新聞の切り抜き」から世界・日本の動きを俯瞰する
第4章:「三種の神器」からお宝株のストーリーを読む
第5章:最強の四季報併読術 ―投資スタンスを盤石にするために
第6章:四季報の達人が教える有望銘柄の見つけ方

渡部氏は、四季報、日経新聞、そしてこの指標ノートを三種の神器として投資の中心に添えています。そしてこれらを活用した投資法について学ぶ場が著者が運営している複眼経済塾となっています。こちらの本を読んだだけでも十分にエッセンスがわかるぐらい指標ノートや日経新聞を読む上での勘所が実例と共に記載されています。2023年2月発行と比較的新しいこともあり、時事問題のマーケットに対する影響や注目すべきポイントをタイムリーに把握できます。四季報の読み方については前書の「10倍株・100倍株の探し方」の方がより詳細に記載されていますので、そちらと合わせて読むのがおすすめです。

  • 指標ノートの記載項目
    • 日経平均終値、出来高、TOPIX終値、マザーズ終値、10年国債金利、NYダウ終値、SP500終値、ナスダック終値、米国10年金利、NY為替、WTI原油、その日の紙面から気づいた事をコメント欄に。
    • 単純作業だが、数値を自分で入力することで動向の変化や気づきの領域が広がってくる。気づきを得た銘柄は四季報で調べる。
  • 日経新聞を読むコツ
    • 物事を多面的に見ることが重要。日経新聞を読む際にも、違う見方はないかと考えながら読むことが重要。極力バイアスがないように、事実と意見を切り分ける。
    • 変換点を捉える「ぶり(**年ぶりなど),年(**年来)、初、最(最高 最多など)、新(更新 新技術)、発(発見 発明)、脱(脱**)、改革(改革 改正)」のキーワードに注目
  • 株は連想ゲーム。半歩先、誰が儲かるか、世の中の変化を意識して考える。

こちらも上記はポイントだけですが、実例のところでは具体的なニュースを取り上げて当時の筆者コメントなど、かなり詳細に記載されていますので、本書を読むことで具体的なイメージが湧くと思います。

 

渡部氏と同じ複眼経済塾に所属するエミン氏の会社四季報の読み方については以下の記事でまとめています。

会社四季報の編集長による四季報ピックアップ銘柄についてはこちらの記事をどうぞ。