ドイツ不動産市場がメルトダウン。建設業にも影響。

米国長期債が4.7%を超える高い金利となっている中、米国長期債はリーマンショック並みの暴落となっていますが、ドイツの不動産市場も急速に悪化しているようです。オフィス不動産市場の低迷など、保有不動産に対する影響のみならず、大手建設業にも破綻の波が押し寄せています。

  • 超低金利時代の好況から一変-金利や建設費の上昇、価格下落が圧迫
  • 世界的にも建設業界冷え込む、「調整のスピード著しい」と投資家

 

ニュルンベルクの象徴、クエレ・ビルの再開発プロジェクトが停滞

戦後のドイツ復興を象徴する建物であるニュルンベルクの「クエレ・ビル」は、再開発プロジェクトの最終段階に差し掛かっていました。しかし、今年の7月に市長が出席する中で、このプロジェクトの運命が不透明になる出来事が発生しました。プロジェクトを担当していたゲルヒ・グループは、関連会社とともに破産手続きを開始しました。これにより、クエレ・ビルの開所時期は不確かとなり、ゲルヒ・グループは約6300億円に相当する400億ユーロの建設中プロジェクトを抱えることになりました。

不動産市場の不安要因

このような状況に至った背景には、低金利での資金調達が難しくなり、不動産市場全体が不安定になっていることが挙げられます。不動産市場の変化が投資家の不安を引き起こしていますが、特に開発業者が建設プロジェクトに直面している危機が顕著です。

ドイツの法律事務所ノールの再建・破綻担当共同責任者であるマーリース・ラシュケ氏は、「プロジェクト開発業者は膨らむ建設コスト、上昇する金利、価格の下落に苦しんでいる」と説明しています。実際、過去数週間にはゲルヒなどの開発業者から破産申請が相次いでいます。

世界的な影響

ドイツだけでなく、世界各地の開発業者も困難な状況に直面しています。オーストラリアでは、コストの上昇と需要の減少により、多くの住宅建設会社が清算に追い込まれました。スウェーデンでは建設不況により倒産が増加し、フィンランドでも住宅建設が減少しています。

長期にわたって低金利が続き、資金が不動産に流入していた時代から、状況は急速に変わりました。安く資金を調達してプロジェクトを購入し、価格が上昇し続ける市場で売りさばくことは、以前ほど容易ではなくなりました。

不動産市場の現状

不動産仲介会社サビルズによると、ドイツのオフィス用不動産取引は少なくとも2014年以来の低水準にまで減少しました。大手不動産保有会社ボノビアは、新規の建設開発が「ほぼ不可能」であると警告しています。

コメルツ・リアルの最高経営責任者であるヘニング・コッホ氏は、「調整のスピードが著しい」と指摘し、「ドイツ不動産市場のリセッションは1年半前に始まり、ここ2-3カ月は開発業者の破産がいっそう増えている」と述べています。

まとめ

不動産市場における大きな変化が開発業者に影響を及ぼし、多くのプロジェクトが停滞しています。低金利の終了、建設コストの上昇、価格の下落などが、この状況を招いた要因です。不動産市場の今後の展望については不透明な面があり、開発業者や投資家にとって厳しい状況が続いています。

 

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