米国リート資産価値より2-4割割安水準。オフィスリートはコロナショック時の水準に到達。

金利上昇が進み米国不動産景況感が悪化し、REITの価格下落が進んでいます。この下落により、REITが保有している物件価値よりも2-4割も割安となっています。

特に空室率の目立つオフィス系は4割安の水準で、ハイテク企業を中心に需要悪化でオフィス需要が落ち込むと懸念されています。この水準はコロナショックでロックダウンを行っていた2020年3月時と同水準の割安さです。REITの中では安定的なパフォーマンスであると言われている住宅系も2割安の水準となっています。住宅ローン金利の上昇が住宅需要の足を引っ張っている形ですが、これはインフレを抑制しようとしているFEDの目論見通りとも言えます。REIT市場の不況は2022年のIPO数にも表れていて、年間で1件のみと2001年以来の少なさでした。

 

さらにKKRの不動産ファンドも解約制限にかかったというニュースが出ており、多くのプライベート不動産ファンドで解約制限が相次いでいます。

米投資ファンド大手のKKRが、非上場の不動産投資信託(REIT)「KREST」の解約請求を一部制限したことがわかった。富裕層向けに提供する同ファンドで、解約上限を約6割上回る請求があったため。他社が運用する同様のファンドでも解約制限が相次ぐ。金利上昇を背景に不動産投資に慎重な姿勢が強まってきた。

KRESTの投資家は毎四半期に解約を請求できるが、同ファンドが解約に応じるのは純資産総額の5%までとする規約がある。米証券取引委員会(SEC)への提出資料によると、13日まで受け付けていた2023年1~3月期の解約請求は合計1億2800万ドル(約165億円)に及び、基準日の純資産総額の8.1%に相当したため、上限の7930 万ドルのみ解約に応じた。

KKRが運営するKRESTは主に米国の住宅や物流施設、モーゲージローン債に投資を行っており、22年末では純資産総額約16億ドルあります。すでにニュースとなっていたブラックストーン運営の不動産ファンドと合わせて、解約規制の流れはまだ止まっていないようです。

 

上記、解約制限問題が起きている不動産ファンドはいずれもプライベートREITで、すでに価格調整が起きているパブリックREITよりも遅れて反応するため、2022年に起きていた価格の乖離が是正されていく点についてはREIT Outlookの記事でも取り上げました。

プライベートREITがついに下落してきた点は、REITの底打ちが近づいている兆候とも取れますし、実際、FRBは次回の会合で利上げをマイルドにする方針を固め、2月の利上げを0.25%とした後、今春での利上げ一時停止を議論し始めるという観測が出ています。これは株式のみならずREITにとっても良いニュースで、FRBのPivotが確認されれば、REIT価格も回復に向かっていくと思われます。