シンガポールREIT マーケット市況 8月レポート

今年上半期も終わったところで、シンガポールREITのパフォーマンスを、Kenny Loh氏の8月13日付レポートで振り返りたいと思います。

 

FTSE ST REITインデックスは先月末の716.79から702.62と、-1.98%下落しました。

短期、中期、長期での方向性も横ばい圏となっており、現在は700がサポートラインとボックスの下限に来ています。

 

各銘柄のファンダメンタルズを見ていきましょう。

一年以上price/NVA列で緑色のセルが多い状態が続いており、ファンダメンタルズの観点では割安銘柄ばかりであることがわかります。DPU列が緑色になっているものは直近一年の配当額がその前年の配当よりも増額されている銘柄になります。

 

 

<Price/NAV>

Price/NAVの欄が株式でいうPBR相当の指数で、割安度を示しています。

 *NAV=net asset value(純資産総額)

ST REITインデックスのPrice/NAV は0.78と先月レポートの0.80から下落したものの、コロナショックやリーマンショックレベルの割安圏となっています。

Price/NAVの上位5銘柄は

Most overvalued REITs :based on Price/NAV 

  • Parkway Life REIT (Price/NAV = 1.67)
  • Keppel DC REIT (Price/NAV = 1.53)
  • Mapletree Industrial Trust (Price/NAV = 1.21)
  • Capitaland Ascendas REIT (Price/NAV = 1.19)
  • Mapletree Logistics Trust (Price/NAV = 1.1)

前月と同じ銘柄が並びます。

 

下位5銘柄は

  • Most undervalued REITs :based on Price/NAV
    • Manulife US REIT (Price/NAV = 0.17)
    • Lippo Malls Indonesia Retail Trust (Price/NAV=0.24)
    • Prime US REIT (Price/NAV = 0.26)
    • Keppel Pacific Oak REIT (Price/NAV = 0.35)
    • EC World Reit (Price/NAV = 0.40)

となっています。Manulifeが大幅下落し、ついに0.2を割っています。

 

<配当利回り>

ST REITインデックスの配当利回りは8.93%と先月の9%超えからはやや下落したものの、過去の歴史的水準から見てもリーマンショック時を超えるような高い水準となっています。時価総額ベースでの平均利回りは6.33%となっています。個別でみても40銘柄中20銘柄は利回りが7%を超えており、うち8銘柄は10%を超えています。シンガポール国債とのイールドスプレッドも5.75%と先月の6.05%から2ヶ月連続で減少したものの高水準となっています。

Highest Distribution Yield REITs (ttm)

  • Manulife US REIT (49.48%)
  • Prime US REIT (28.59%)
  • Keppel Pacific Oak US REIT (18.53%)
  • EC World Reit (15.02%)
  • UtdHampshReit (14.00%)

決算後に大幅下落したManulifeを筆頭に米国関連リートが変わらずTop3を占めており、減配が必須と言える水準の利回りとなっています。Manulife US REITはLTV比率の規定上限により、配当を実施できない事態となっており、スポンサーの動き次第では倒産の可能性も出ています。

 

株式と同様、配当利回りが高ければ良いというものでもないので、配当利回り単独での投資判断は危険です。配当の持続性やなぜ投資価格が下がっているのかを考慮し、他の指標も勘案しながら、投資判断を行う必要があります。

  • Highest Gearing Ratio REITs
    • Manulife US REIT (49.5%)
    • Elite Commercial Trust (46.0%)
    • Prime US REIT (42.8%)
    • UtdHampshReit (42.6%)
    • Suntec REIT (42.6%)

ここでも存続危機となっているManulifeが突出して高いGearing Ratio(LTV)となっています。全体でのGearig Ratioも37.80%と高い傾向になっています。

 

個別銘柄のヒートマップは下記となります。

 

8月に入り、米金利の上昇や中国不動産市場の危機など、米国株、日本株ともに下落基調になっています。例に漏れずREITも下落となっていますが、金利水準もピークを迎える局面となっており、短期的な調整で終わるのか注目です。

 

参照:Kenny Loh's blog

Singapore REITs Monthly Update (August 13th, 2023) - My Stocks Investing