【銘柄分析】OUE Commercial Trust :オフィスとホテルに投資する複合リート

<概要・特徴>

シンガポールのオフィスとホテルをメインに投資している複合REITです。2014年上場で、元々はオフィスに特化したOUC Commercial Trustとホテルに特化したOUC Hospitalty Trustの2つのリートが合併し、現在のOUE Commercial Trustとなりました。スポンサーはOUEで、シンガポール中心部の優良物件を保有しています。

保有している物件数は7件と多くないですが、オフィス3物件はシンガポールのオフィス中心街にあり、ホテル2物件もショッピングの中心街であるオーチャードエリア、チャンギ空港直通という好立地です。また、シンガポール中心のポートフォリオではありますが、1物件を中国 上海に保有しています。

 

2014年の上場以来、資産規模を着実に伸ばしており、現在はIPO時から4倍となるS$6.8 billionのAUMとなっています。

 

価格0.29 SGD 時価総額1,560 M SGD 配当利回り7.3% (8/13時点)

直近の2023H1実績はRevenue,NPIがそれぞれ前年比+19.8%, +23.1%と好調であった一方、DPUは-2.8%となっています。Hilton, Crown Plazaの2ホテルのリノベーションなどに投資しており、今後これらの投資分を回収していくフェーズになってきます。

 

<ポートフォリオ>

ポートフォリに締めるセグメント別の売上はOfficeが最も大きく50.7%, Hospitality 32.1%, Retail 17.2%となっています。基幹物件であるHilton Singapore Orchard, One Raffles Placeで全体の48%を占めています。国別ではシンガポール 92%, 中国8%の比率となっています。

 

それぞれの物件の詳細データは以下になります。

 

まずはOfficeセグメントを確認しましょう。

直近のオフィスの稼働率は96.1%とシンガポールオフィスマーケットの平均と同水準であるため、改善が必要と言えるでしょう。賃上げ更新率は8.1%と上々の内容となっています。

中国 上海の物件であるLippo Plazaについては、上海Aグレードオフィスの平均稼働率である89.4%を下回り、86.6%となっています。QoQでは+11.4ppt改善していますので、この回復基調を継続できるかがポイントです。

 

オフィスを中心としたコマーシャルセグメントではTop10テナントによる売上が全体の27%を占めています。

 

次にRetail セグメントを代表してMandarin Galleryのパフォーマンスを確認します。

直近2023年6月末時点の稼働率は98%。賃上げ更新比率は+5.5%となっています。平均sqf単価は右肩下がりでQoQでも-4.1%となってしまっています。

 

最後に現在力を入れているHospitalityセグメントについて。

他のホテルREITとも共通して言えますが、Hospitalityセグメントの実績は好調で、Revenue, NPI共に前年比で+35.8%, +36.4%と大きく成長しています。ホテルのリノベーションも功を奏し、一部屋あたりの売上を示すRevPAR(Revenue per Available Room)がHiltonで前年比+16.5%, Crowne Plaza +54.1%と、客足と共に単価も改善していることが伺えます。

 

売上の65%は通常の個人旅行客等で、法人契約や旅行代理店からの売上が35%を占めています。

 

 

<テナント・リース、財務状況>

テナントとのリース契約状況はテナントのセクターも契約終了予定期間も分散されています。

 

2023年6月にSLL(Sustainability-linked loan)でS$430 millionのリファイナンスを完了しているため、2025年まで借り換えを行う必要はなく、それまでに今のインフレが落ち着いていれば、低い利率での借入が期待されます。現在のレバレッジ比率は39.1%と安定的な水準、平均借入金利は4.1%と昨今の金利上昇の影響で金利は上がってきています。固定金利比率は68.2%と他リートと比べるとやや低い水準です。

 

<成長戦略>

今後の戦略として財務的な資本構成の強化と合わせて、保有物件のリノベなどによる資産価値の向上、さらに長期的にはシンガポール国外のマーケット(日本、オーストラリア、英国)への拡大にも目を向けています。

 

特にホテルはAEI(Asset Enhancement Initiatives)として積極的にリノベーションを行なっています。下記は、2023年1月に完了したヒルトンのリブランディング(以前はマンダリン・オーチャードホテルでした)。そして、現在進めているチャンギ空港すぐにあるクラウン プラザです。

 

今回の記事で使用した資料は以下、IRサイトでリリースされているスライドより抜粋しています。

OUE Commercial REIT - Investor Relations :