シンガポールREIT マーケット市況 11月レポート

FY2023 Q3決算発表がおおかた出揃ってきたところで、シンガポールREITのパフォーマンスを、Kenny Loh氏の11月10日付レポートで振り返りたいと思います。

 

FTSE ST REITインデックスは先月末の646.46から641.39と、-0.78%下落しました。

短期、中期、長期全てで下落トレンドとなっており、サポートラインであった700を割ったところから下落が加速しましたが、現在はそこから反転して戻してきている状況です。

 

各銘柄のファンダメンタルズを見ていきましょう。

一年以上price/NVA列で緑色のセルが多い状態が続いており、ファンダメンタルズの観点では割安銘柄ばかりであることがわかります。DPU列が緑色になっているものは直近一年の配当額がその前年の配当よりも増額されている銘柄になります。

 

 

<Price/NAV>

Price/NAVの欄が株式でいうPBR相当の指数で、割安度を示しています。

 *NAV=net asset value(純資産総額)

ST REITインデックスのPrice/NAV は0.71と先月同様の水準となっており、コロナショックやリーマンショックレベルの割安圏となっています。

Price/NAVの上位5銘柄は

Most overvalued REITs :based on Price/NAV 

  • Parkway Life REIT (Price/NAV = 1.51)
  • Keppel DC REIT (Price/NAV = 1.31)
  • Capitaland Ascendas REIT (Price/NAV = 1.16)
  • Mapletree Industrial Trust (Price/NAV = 1.15)
  • Mapletree Logistics Trust (Price/NAV = 1.08)

前月と同じ銘柄が並びます。

 

下位5銘柄は

  • Most undervalued REITs :based on Price/NAV
    • Prime US REIT (Price/NAV = 0.17)
    • Manulife US REIT (Price/NAV = 0.20)
    • Lippo Malls Indonesia Retail Trust (Price/NAV=0.26)
    • Keppel Pacific Oak REIT (Price/NAV = 0.31)
    • ARA HTrust (Price/NAV = 0.35)

となっています。米国オフィスに投資するPrime, Manulifeが共に0.2を割っています。

 

<配当利回り>

ST REITインデックスの配当利回りは9.57%と先月の10%超えからはやや下落したものの、過去の歴史的水準から見てもリーマンショック時を超えるような高い水準となっています。時価総額ベースでの平均利回りは6.68%となっています。個別でみても40銘柄中20銘柄は利回りが7%を超えており、うち11銘柄は10%を超えています。シンガポール国債とのイールドスプレッドも6.24%と先月の6.79%から減少したものの高水準となっています。

Highest Distribution Yield REITs (ttm)

  • Prime US REIT (42.89%)
  • Manulife US REIT (27.09%)
  • Keppel Pacific Oak US REIT (21.12%)
  • Elite Commercial REIT (15.67%)
  • UtdHampshReit (14.00%)

今年度は一貫して米国関連リートが上位を占めており、減配が必須と言える水準の利回りとなっています。Manulife US REITはLTV比率の規定上限により、配当を実施できない事態から改善されておらず、スポンサーとリカバリープランについて継続した議論を行なっているようです。

 

株式と同様、配当利回りが高ければ良いというものでもないので、配当利回り単独での投資判断は危険です。配当の持続性やなぜ投資価格が下がっているのかを考慮し、他の指標も勘案しながら、投資判断を行う必要があります。

  • Highest Gearing Ratio REITs
    • Manulife US REIT (56.0%)
    • Elite Commercial Trust (45.4%)
    • Prime US REIT (43.7%)
    • Lippo Malls Trust (43.0%)
    • Suntec REIT (42.7%)

ここでも存続危機となっているManulifeが突出して高いGearing Ratio(LTV)となっています。全体でのGearig Ratioも38.08%と高い傾向になっています。

 

個別銘柄のヒートマップは下記となります。

11月に入り、米金利の上昇一服感も出ており、米国株、日本株ともに反発局面を迎えています。特にREITは金利上昇局面が終わると、大きく反発することが統計的に出ているため、今後の上昇に期待が持てます。この辺りのデータについては次の記事でまとめたいと思います。

 

参照:Kenny Loh's blog

Singapore REITs Monthly Update (November 10th, 2023) - My Stocks Investing