東証リート指数は2022年は2000円台であったものの、2023年年初は1900円、さらに2023年上半期が終わった時点で1860円前後と、好調なパフォーマンスを上げる日経平均に見劣りしています。そのような市場環境の悪化もあるのか、J-REITでは合併が増え、全60銘柄のうち約半数の30銘柄が「総合型・複合型」リートとなっています。
不動産投資信託(REIT)の合併が相次いでいる。保有資産を増やし、物件の入れ替えをしやすくするほか、物件売却による分配金原資の確保などが狙い。ただ、REITはオフィスや物流施設など保有資産のリスクに応じて評価されるのが一般的。合併による「総合型化」は投資対象としての透明性を低下させ、海外マネーの離反につながりかねない。
6月に合併したケネディクス・オフィスが同系列のケネディクス・レジデンシャル、ケネディクス商業リートを吸収合併しました。さらに3月にはオフィス中心の森トラスト総合リートが森トラストホテルリートを吸収合併し、2021年には商業リートの日本リテールファンドがオフィス系のMCUSB MidCityを吸収合併し、日本都市ファンドとなりました。
日経の記事にも記載がありますが、実はリートの本場である米国では総合型REITはあまりありません。しかし、日本と同じくして、近年シンガポールREITも合併が相次ぎ、総合型(or複合型)REITが増えてきています。同じスポンサーがセクター毎に分けて上場していたREITを合併させるケースが大半です。以下4銘柄が該当となります。
- CapitaLand Integrated Commercial Trust : リテール&オフィスREIT
- Mapletree Pan Asia Commercial Trust :シンガポール&東アジア対象REIT
- Frasers Logistics & Commercial Trust : 物流・産業施設&オフィスREIT
- OUE Commercial Trust : オフィス&ホテルREIT
それぞれの合併の背景・詳細をみていきましょう。
<CapitaLand Integrated Commercial Trust >
シンガポールREITを代表する銘柄で時価総額1位。2020年にCapitaLand系列のリテールREITとオフィスREIT(CapitaLand Mall TrustとCapitaLand Commercial Trust)が合併して誕生。2020年はコロナによりショッピングモールを中心とするリテールREITもオフィスREITも状況が危ぶまれる状況でした。
<Mapletree Pan Asia Commercial Trust >
大手MapletreeがスポンサーのREIT。2022年にシンガポールマーケットのオフィス&リテールを投資対象とする複合リートであるMapletree Commercial Trustと、主に東アジアを投資対象とするMapletree North Asia Commercial Trustが合併。合併により時価総額5位となる。
<Frasers Logistics & Commercial Trust>
2020年に物流・産業施設を投資対象とするFrasers Logistics & Industrial Trustと、オフィスリートであるFrasers Commercial Trustが合併。合併により時価総額6位となり、中堅REITから大型REITへと成長を遂げる。
<OUE Commercial Trust>
2019年にOUEがスポンサーであるオフィスリートのOUE Commercial REITと、ホテルリートであるOUE Hospitality Trustが合併。それぞれ規模は小さかったものの、マリーナベイエリアのオフィスやチャンギ国際空港隣接ホテルなど優良物件を保有しているリートでした。
一般的に、総合型リートになることで時価総額も大きくなり機関投資家からの投資資金が集まりやすくなり流動性が改善される点、さらに投資対象の幅が広がることでの分散化が進み、より安定性の高いREITになることが期待されます。
しかし投資家目線では、そもそも分散化は自身のポートフォリオを通して行うものであり、単一セクターREITの方が、各々でマーケットの状況に応じて組み入れ比率を調整できるため使いやすいです。総合型リートを購入することでセクターの分散化を図りたいのであれば、REIT市場全体に投資するインデックスETFを購入する方が良いです。