ARKの9月Webinarの日本語版動画がアップされました。9/2のジャクソンホール会議後に収録されたものです。直近の株価下落につながっているインフレや金利上昇について語っており、今月以降の投資戦略を練る上で有益な内容です。ARKが投資しているハイグロース株は不調ですが、金融政策やマーケット指標の分析については深い見識で解説してくれています。
今回、パウエルFRB議長のジャクソンホール講演、季節要因が経済指標に与える影響、デフレ環境に移行しつつあると考える理由などについて見解を示しています
<財政政策、金融政策>
- ジャクソンホール会議ではボルカーの話を頻繁に出し、金融引き締めを継続し、インフレと戦う姿勢を強調。(FOMCの時と同様)
- インフレ低減法案はインフレ抑制につながる。(先月はこの法案はインフレの後押しになってしまうとコメントしていたが、撤回したようだ。)。アメリカは2期連続でGDPマイナスですでに景気後退に入っている、先行指標はデフレを示している。
<経済指標、各種市況>
- 雇用統計は強いが、遅行指標である。新たに生まれた雇用が女性のもので、副業を含んでいる可能性がある。季節要因も上手く組み込まれておらず、実際はそこまで雇用は強くないとARKは疑っている。なぜなら失業保険申請数が急激に増えているため。
- 自動車販売に注目している。半導体問題も回復しておりEVの加速が見られる。(一方、ガソリン車は減速)。住宅販売も弱い。消費者心理が最低水準からようやく金融危機時レベルまで戻った程度で貯蓄率も5%まで低下。消費者に購入してもらうには値下げが必要になる。
- PCEは先月比では0.1%下がっている。今年末or来年早々には前年比3%まで戻ると想定している。(今は5.3%)
- 株価はボトムを形成していると考えている。直近(8月前半)の株価上昇はFRBが引き締め緩和とデフレを予測しての上げ相場だったが、FRBはそこを打ち消した。タカ派に見せようとしている。しかし実際は上述の通り、インフレ率は今後数ヶ月で下がっていく。
- 株価を決めるのは企業業績とPERなどのマルチプル。企業業績は悪化する。ハイグロは業績低迷期に相対的に強くなる。今後インフレが収まることで長期金利が下がりマルチプルは上がってくる。
FEDの政策についてはこちらのTweetでもキャシーが詳細を語っています。
The Fed is basing monetary policy decisions on lagging indicators: employment and core inflation. Leading inflation indicators like gold and copper are flagging the risk of deflation. Even the oil price has dropped more than 35% from its peak, erasing most of the gain this year. https://t.co/e45KJWrjOZ
— Cathie Wood (@CathieDWood) September 7, 2022
- 金利上昇はボルカー時代は金利10%→20%で2倍だったが、今回は0.25%から2.5%とすでに金利は10倍に上昇しており、マーケットに与える影響は大きい。
- 原油・ガソリン、金や木材などのコモディティ価格下落がインフレが終わり、デフレリスクが高まっていることを示している。リテールが在庫処分を進めていることもデフレにつながる。
- 次の3-6ヶ月でFEDが引き締めから緩和への金融政策変更を行う可能性もある。
ちなみに先月8月のWebinarではビットコインについて言及していました。直近の価格は低迷はしているものの、そろそろ下げ止まりを予想。長期的に上目線は変わらずのスタンスです。ARKは仮想通貨取引所であるコインベース株は一部売却をしており、この売却後、価格は少し戻してきている。
9/9に出演したFOX Businessでは9月WebinarやTweetの内容と概ね同様で、次の3-6ヶ月でFEDが引き締めから緩和への金融政策変更を行っても驚かないという点を強調していたのが印象的でした。
直近のARKの売買を見ると、ポートフォリオ上位のTDOC,ZM,PATHを連日購入しているが、株価は暴落中のため、ミネルヴィニ氏からはボトムフィッシャー扱いで揶揄されている。コロナ禍で好調であった銘柄はARKの思惑通りリバっていけるのでしょうか。。
The bottom fisher that keeps on fishing... pic.twitter.com/LNnAczB30J
— Mark Minervini (@markminervini) September 8, 2022
ARK ETF(ARKK)は年初来で大きくマイナスですが、7月底値から反転の兆しも出てきています。今のマーケット環境ではARKのようなハイグロース株も割安ですが、他の銘柄でも割安のものはたくさんあります。長期投資目線であればシンプルに大型株やS&P500のインデックスを少しづつ買っていくだけでも良い価格帯だと思います。