米銀2行が破綻。CMBS空売りでリターン119%のヘッジファンド、次は米オフィス標的

この週末はシリコンバレー銀行の破綻、そしてニューヨークのシグニチャー銀行の連鎖破綻で話題は持ちきりでしたが、米政府,FRB,FDICは共同声明を発表し、両行の預金全額保護を決定しました。

SVB破綻に伴う危機の深刻化回避を目指す連邦準備制度は、顧客の預金引き出し需要に応える安全装置を提供するため、通常より貸し付け条件が緩やかな「バンク・ターム・ファンディング・プログラム」を設定すると発表した。財務省の承認を得て、連邦準備制度の緊急貸し付け権限の下で融資プログラムを準備する。

  連邦準備制度当局者はオンライン会見で、より広範な米銀行システムの保険対象外預金を保護するために十分な規模になると説明した。貸し付けプログラムの裏付けとして、財務省が為替安定化基金から最大250億ドルを利用可能とするが、連邦準備制度は活用を想定しないという。

この措置により、一時的な安定は担保されたため、後は現在入札が行われているシリコンバレー銀行(SVB)の買い手が決定するかどうかが今回の破綻処理の焦点となります。しかし、政府による最大250億ドルの預金者保護プログラムが発表されたことで、さらに他銀行が連鎖的に手をあげることで、この金額規模で賄い切れるかという懸念はまだ払拭されていません。米国週明けの預金引き上げ状況などを引き続き確認する必要があります。

 

そしてSVB破綻の一因として保有している不動産担保証券(MBS)の減損が取り上げられていましたが、REITや実物不動産投資家にとっては、MBS周辺の不安がより注目を浴びる形となっています。

ショッピングモール向けローンを裏付けとした証券の空売りで119%のリターンを上げたヘッジファンド運用者が、今度は米国のオフィス物件を標的にしている。

  古いオフィスの多くには新型コロナウイルス時代の後にオフィスワーカーとテナントが戻らず、こうした物件向けローンでデフォルト(債務不履行)が増えるだろうと、ポルポ・キャピタル・マネジメントの創業者、ダニエル・マクナマラ氏が述べた。

バークレイズのアナリスト、リア・オーバービー、アヌジ・ジェイン両氏はリポートで「オフィス用ローンに対するエクスポージャーを敬遠する傾向は不動産取引をさらに妨げ、一段の価値低下をもたらす可能性がある」と分析。米国のオフィス物件の価格がピークから底までで30%下落すると予想。さらに「悪化するファンダメンタルズは下振れリスクを高める」と付け加えた。

連邦預金保険公社(FDIC)のマーティン・グルエンバーグ総裁代行は6日の講演で「CMBSのオフィス物件で延滞が増え始めている初期の兆候が見られる」と述べた。

商業用不動産担保証券(CMBS)のショートで119%ものリターンをあげているヘッジファンドは、次は米国のオフィス物件関連のローン返済が滞ると、次に狙いを定めています。シンガポールREITで米国オフィスに投資しているManulife US REITが物件の評価損に伴いLTV縮小のための施策に奔走していますが、まさに米国オフィスREIT全体でこのような懸念が起きており、米国オフィスREITも大きく売られています。

 

14日には米国CPI発表、22日にはFOMCもありますが、今回の米銀破綻に伴い、今後のFRBの利上げ方針(利上げペースやターミナルレート)に変更が出てくるのか注目です。