【書評】タングル 真山仁

ハゲタカシリーズで有名な真山仁 氏の新作タングル。シンガポールを舞台に、量子コンピュータという最先端テクノロジーを題材にした小説です。ハゲタカでお馴染みのあの人も物語終盤で出てきますので、ファンにもオススメの一冊です。

タングル

タングル

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シンガポールを舞台に描く熱き人間ドラマ.。
追い詰められたニッポンは再びライジング・サンとなれるのか!?
地球温暖化を防ぎ、世界を変える可能性を持つ光量子コンピューター開発の第一人者である東都大学早乙女教授は、開発に前向きでない日本を見限りシンガポールの地で研究を進めていた。
モノ作り大国だった頃の天才的な技術者を募り、シンガポールの若者達を教育しながら前進する早乙女研究所。実現化が見えてきた時に利権を狙う大国たちが介入しようとしてきて……。
そんな中、ニューヨークのファンドから、あの男が早乙女教授の前に姿を現した……。

最先端テクノロジーは半導体然り、米中対立の政治的な影響を大きく受けます。本作も日本、シンガポール、米国、中国の思惑に翻弄される中で物語は進みます。特に、量子コンピュータは現在日本が力を入れているスパコンを大きく凌駕し、まさにゲームチェンジャーとなるテクノロジーです。現在使用されている暗号化を全て無力化する力を持っていたり、脅威の演算力で軍事的にも革命を起こすことができます。さらに本書で、量子コンピュータの一番の魅力として語られている点は、"エネルギー効率"で、既存の最先端スパコンの場合、原発1機分ほどの膨大なエネルギーがCPU冷却のために必要となります。しかし量子コンピュータは圧倒的に省電力で、エネルギー問題の解決にもつながるのです。

 

各国政府の施策・思惑、それに絡んでくる投資ファンドにベンチャー起業と、目まぐるしく動く展開を楽しめます。ビジネス小説・金融小説ファンや、テクノロジー好きにも飽きさせない内容となっていますので、ぜひ読んでみてください。

 

同じシンガポールを舞台とする小説では橘玲 氏の「タックスヘイヴン」も金融小説として面白いです。