Manulife US REITの物件評価額が10.9%ダウンしたことで、LTVが49%となってしまい、シンガポール当局(MAS)が設定している上限の50%までわずかとなってしまっています。(12月初旬の段階ではまだLTV42%近辺でした。)
2021年末ではUSD 2.18billionであった評価額が2022年末でUSD 1.95billionとなりました。これは米国の金利上昇により不動産価値ディスカウント、さらには空室率やオフィス物件が置かれているマクロ環境などが影響しています。ようやくアフターコロナでオフィス回帰が進むかと期待されていたところで厳しい状況に直面することになりました。
Manulifeが保有する各物件の評価額については以下の表となります。Figueroaについては33%もの下落となっています。
SGXはREITの安定性・健全性を担保するために、LTV比率50%以内に抑えることを条件としています。12月初旬ににCitigroup Global Marketsのコンサルを受けレバレッジ減少に向けてのオプションを模索しているというニュースが出ていましたが、おそらくLTV比率50%抵触間近という状況を受け、増資を検討している可能性があります。そしてこの増資は既存投資家にとっては希薄化を意味し、さらなる株価の下落が予想されます。2022年のManulife US REITの株価は年間を通して下がり続けていましたが、12月に入ってからもさらに20%下落するなど暴落は止まらず、年初来-55%という結果に終わりました。通常、増資を行う際はマーケット価格からディスカウントされた価格で募集が行われるため、現在の株価よりもさらに下落してしまいます。米国の金利上昇の目処が見えたことで、年末に向けて株価が反転すればよかったのですが、さらなる下落となったことでManulife US REITは苦しい選択を強いられることになりそうです。
今回のManulife US REITのようにLTVが規制水準上限の50%に近い水準の銘柄としてはMapletree Pan Asia Commercial REIT, Keppel REIT, Suntec REITなどがあり、米国同様シンガポールも金利上昇が進んでいるため、これらの銘柄でも今回と同じような懸念が出ないともいえません。