日本では積立NISAの制度が変更になり、投資枠がさらに拡大されるというニュースが話題になっています。
年間投資額は、積み立ては今の3倍の120万円、一般投資は今の2倍の240万円で、あわせて360万円となり、非課税で保有できる期間は無期限となります。 生涯の投資上限を1800万円とし、そのうち、1200万円を「成長投資枠」として、投資信託に限らず株式投資に使えることとします。
そして、NISAと共に節税メリットを活かした投資スキームが確定拠出年金:iDecoです。NISAは利益確定時にかかる20%の税金が免除されますが、iDecoの場合、拠出した金額がそのまま所得税控除となるため、より確実に節税効果を享受できます。
シンガポールへ海外移住すると日本のNISAやiDecoは利用することができませんが、iDecoと同様の節税効果がある”SRS”という制度を利用することができます。シンガポール人や永住権(PR)所有者はCPFという年金積立を実施していると思いますが、EPなどのビザで就労・在住している方にはCPFがなく、将来の年金積立に不安がでます。そのギャップを埋めるための強い味方がこのSRS(Supplemental Retirement Scheme)です。私もシンガポールREITへの投資はこのSRS口座に拠出した分で節税メリットを享受しながら投資を実施しています。
しかもこのSRSの良い点は「まとめて自分の好きなタイミングで拠出することができる」点で、1-12月の期間であれば、どのタイミングで拠出をしてもその年度の所得税控除としてカウントされ節税することができます。(例えば2022年度の所得税控除を得ようと思えば、2022年12月31日までにSRSへ拠出を行えばOK.)シンガポールでは通常のボーナスとは別に毎年12月にAWSという1ヶ月分の給与相当のボーナスを貰える方が多いと思います。そのため比較的キャッシュに余裕が出る12月にまとめてSRS口座に拠出するのが私のオススメの使い方です。
<SRS口座の開設方法>
SRSはシンガポールの3大銀行であるDBS ,OCBC,UOBのいずれでも開くことができます。どの銀行で開設してもサービスに違いはないため、自分が普段使っている銀行で申請すれば良いと思います。
私はOCBCでSRS口座を開設しているため、そちらを例にとって説明しますが、とてもシンプルです。上記、各銀行のSRSサイトへのリンクから申請を行います。
OCBCであれば"Apply online"をクリックすると、普段使っているOCBCのネットバンキング口座のログインページにつながります。通常通りログインを進めると、申請ページに飛びますので、そこで申請するだけ完了となります。申請が完了すると、通常の預金が確認できる”Deposit”と同様に"Retirement Portfolio"という項目が追加され、その中に”SRS Account”と表記があります。
<SRS口座への拠出>
ネットバンキングに”SRS Account”が開設されたら、拠出残高と今年度(ex. 2022/1-12月まで)の拠出額を見ることができます。
拠出額の年間上限はEPでシンガポール人/PRかどうかで変わります。
シンガポール人/PR:$15,300
外国人(EPなど):$35,700
EPで働いている方であれば最大$35,700ドルも拠出可能です。PRの方は現地の年金であるCPFに加入しているため、上限が低く設定されています。SRSはCPFを使用できない外国人向けの節税可能な年金スキームという位置付けです。
この拠出額による節税効果がどれぐらいすごいかというと、
例:年間所得$130,000で$30,000のSRS拠出をする場合
SRSなし:所得税$5,650
SRSあり:所得税$3,891
と31%も節税することができます。シンガポールは日本に比べ所得税率が低く、手取りで多く残ることに驚いた方も多いと思いますが、SRSを活用すると税率はさらに下がることになります。
計算は下記サイトで参照できますので、自分の所得を入れて節税金額をチェックしてみてください。
OCBC Supplementary Retirement Scheme (SRS) Account | Tax Savings
<SRS口座へ拠出した資金を使用しての投資方法>
基本的にSGX(シンガポール証券取引所)上場の株式・債券や投資信託であれば全て購入することができます。もちろんSRS口座に拠出したまま現金にしておいても預金同様の金利がつきますので、投資のタイミングを図るために現金にしておいても問題ありません。SRS口座に金額を入れておくだけで、口座開設した銀行だけでなく、OCBC証券などの証券会社経由でもその資金を使って投資することができます。
ちなみに米国株に投資をしたい場合はSGXに上場しているETFのSPYを購入することで米国S&P500に連動したインデックス投資もできます。*米国株やETFを購入する場合、手数料はIB証券などを通したほうが安いため、SRSではなく通常の証券会社を活用し、SRSはシンガポールREITに投資するのがオススメです。
<SRSのメリット・デメリット>
- メリット
- 拠出額により毎年の所得税が節税できる。
- SRS口座で投資した運用益は非課税。高配当のシンガポールREITの配当ももちろん非課税。
- SRS口座で投資を行わなくても、預金同様に金利を受け取れる。
- SRS口座から引き出す際には引き出し金額の50%のみが税金計算の対象。
- デメリット
- 満期62歳まで基本的に引き出しができない。それ以前に引き出しする場合はペナルティチャージがかかる。かつ引き出し額の100%が税金計算の対象になり節税メリットが薄くなる。(*ただし、外国人は帰国するなどの理由でシンガポールを離れる場合は口座開設から10年経てば、ペナルティ対象外となります。)
デメリットのペナルティの部分は気になりますが、SRSはiDecoと同様、年金としての貯蓄が目的になると思うので、(満期の62歳までは長いですが、、)10年引き出さずに運用するというのは特に苦にならないと思います。それ以上に確実に効いてくる節税メリットが大きいと思います。基本スタンスとしてすぐに使用しない余剰資金を積立てていく意識でまずは始めてみるのが良いでしょう。