2022/12/28更新
<概要・特徴>
SGXに上場した最初のヨーロッパREIT。オフィスと産業系施設/物流施設をメインに投資しています。ヨーロッパのエリアは広く、西ヨーロッパ・中央ヨーロッパに物件を保有しています。ウクライナに直接物件は持っていませんが、隣のポーランドにはAUMベースで9%相当額のポートフォリオを持っており、短中期的には移民問題など地政学的な影響も少なからず出る可能性があります。
価格:1.50 EUR 時価総額:843.6 M EUR 配当利回り:11.3% (2022/11/7時点)
直近の2022Q3決算はGross Rev +10.4%、NPI +4.1%と共に前年比プラス成長となっています。2022YTDベースではDPU(一株当たり配当)もYoY+3.8%の実績を上げています。
<ポートフォリオ>
セクター別ではオフィスが49.5%産業施設/物流施設が45.7%とほぼ半々の内訳となっています。
欧州の広い地域に物件を持っており、国別ではオランダ22%,フランス15%、イタリア13%、ドイツ9%、ポーランド9%が上位となっています。
物件稼働率は89.9%とやや90%を下回っていますが、今のヨーロッパ情勢を考えると健闘しているといえます。フランスの稼働率が70%と低いので、ここの改善が課題です。2022Q3の入替賃料上昇率は+6.1%とインフレと合わせて値上げすることに成功しています。
<テナント・リース・財務状況>
Topテナントのイタリア Agenziaが11.4%を占めますが、それ以降は5%以下となっており上位10テナントで30%を占める比率となっています。
金利上昇対策として、借入金の76.4%は固定金利でヘッジしています。
LTVは38.9%とレバレッジは抑えた財務状況となっています。一時期データセンター取得を検討していましたが、物流施設を強化する戦略に方針転換しています。
欧州はリセッション入りがほぼ確実で、米国やシンガポールと比較し経済状況は悪いです。産業施設は比較的リセッション時も強いので、安定した稼働率が望めます。その意味では物流施設にシフトしている戦略が上手くハマる可能性もあります。ドルと異なりリセッションによるユーロ安の状況が続けば、安値で仕込める機会となりそうです。後は、欧州最大の地政学リスクとなっている、ロシア-ウクライナ侵攻の今後の展開がどうなるかが重要なポイントとなるでしょう。
使用したスライドは下記IRサイトの資料から参照しています。
参照:IR資料Cromwell European REIT - Investor Relations - Slides
REIT SynposiumでのCEOのコメントは下記記事にまとめています。
ーー2022/12/28追記ーー
直近は金利上昇によるマーケットセンチメントの悪化やロシアによるヨーロッパ懸念で株価は下がっていますが、12/21にリリースされたアナリストレポートでは"buy"評価、ターゲットプライスはEUR2.15と12/28時点のEUR1.52から約40%のアップサイドが見込まれています。
評価の根拠としては
- 配当利回りが10%を超える水準まで株価が調整しており、長期的な投資妙味のあるレベルとなっている。
- コロナ禍の二年間でも物件稼働率95%以上を維持し、オペレーションを上手く回している実績がある。
- オフィス物件を売却し、産業/物流施設を取得することでポートフォリオを強固なものに入れ替えを進めている。産業/物流施設のポートフォリオ全体に占める割合は46%まで増加している。
- 賃料収入の90%はインフレとリンクさせているため、値上げが期待できる。
- 借入金の76%はヘッジされており金利上昇リスクを抑えている。2024年まで大きな借り換えも不要。