【書評】入門 社債のすべて 土屋剛俊

世界的な金利の上昇に伴い、債券への注目度が高まっています。米国2年債は一時4.7%の利回りとなるなど、米国債を購入するだけで4%以上の利回りを得ることができる状況を見ると、元本保証されている債券投資もありだなと感じるかと思います。国債の利回り上昇は当然、企業の資金調達コストの上昇にもつながるため、企業が発行する"社債"の金利も上がってきています。株式投資は知っているけれど、債券投資はあまり馴染みがないという方も多いと思います。そんな投資家向けに、社債について解説している本が「入門 社債のすべて」です。社債とは何かという基本の部分から社債投資に至るまで広く理解することができます。

【社債と社債投資の疑問・勘所がこれ1冊でわかる「社債」入門書決定版】
今や、社債の発行額は60兆円超。個人向けは10年間で約5倍に増えています。
発行プロセスから分析・投資手法、発行体倒産時の対応まで、わかりやすく解説しました。

買い時・売り時が学べるケーススタディも満載!デフォルト対応も学べます。
(オリンパス、日本航空、アイフル、コバレントマテリアル、エルピーダメモリ)

 

本書の構成は基本編と投資編から成り、

  • 基本編
    • 社債とは何か
    • 社債の種類とその他の債券
    • 利回りと価格の変動
    • 発行プロセスと投資家の保護
    • 社債投資の代替品-債務保証とCDS-
  • 投資編
    • 社債投資と株式投資の違い
    • 日本の社債市場の特徴
    • 具体的なクレジット分析と投資手法
    • 社債投資のケーススタディ
    • 万一デフォルトした場合の対応法

債券価格を理解するDCFの概念についてはファイナンスを学ばれている方にはお馴染みですが、株式やREIT投資にも通じる証券分析の基本です。そこの解説から始め、クレジット分析、そしてオリンパスや日本航空など実際のケーススタディで過去事例からの学びを得ることもできます。普段、株式をメインに投資されているかたも、本書を通して新しい発見が多くあると思います。

 

2022年はS&P500やナスダックなど株式指数も年初から大幅に下落する厳しい相場でしたが、債券投資家にとっては過去例にない暴落相場で、低ボラティリティがメリットの債券投資が株式と同じレベルで暴落した年でした。そんな厳しいマーケットの後は、期待リターンの高い環境が待っています。本書を機会に債券投資にも幅を広げ、収益機会を広げていければと思います。