米国オフィスを投資対象とするManulife US REITの2022 Q3決算が発表されました。
稼働率が2pt近く下落するなど苦しい決算でした。金利上昇による不動産市場へのネガティブな影響、さらにアフターコロナでのオフィス回帰の鈍化傾向の両面が顕在化しています。
稼働率が88.1%と前期比-1.9ptと落ち込んでいます。入替賃料増減率は+4.3%とこちらは良好です。YTDでも賃料増減率は+1.7%となっています。今回の決算発表では、今後のオフィスのリポジショニング戦略を中心トピックとしています。具体的には、よりフレキシブルなオフィス環境を構築するべくリノベーションや提携を進めています。
借入金の金利上昇耐性については、固定金利を81.1%と高い数値になっており、直近5年での借り換えタイミングで金額を分散させています。金利1%上昇で0.105centの配当マイナスインパクトが発生しますので、そろそろ金利上昇の最終局面に近づいているとはいえ、どこまで金利が上がるのかには注意する必要があります。
<物件のリポジショニング戦略について>
オフィス方針変更として、"hotelisation"と"flexible"を両輪のテーマとしています。より柔軟なオフィス環境を提供することでバリューを出そうとしています。
まずはhotelisation施策について見ていきましょう。
従来のオフィススペースだけではなく、ルーフトップバーやラウンジ、さらにはカンファレンススペースやフレックススペースなどコラボレーションを進めるようなエリアを設け、ソーシャルイベントにも活用でるようにしています。
このリノベーション策により、マーケット需要と照らし合わせて賃料の最大30%上昇が可能になると想定しています。
次にflexible施策のほうを見てみましょう。
こちらはJLLとのパートナーシップを締結している通り、シェアオフィススペースの拡大などで、最大30%の賃料上昇を目論でいます。
最後に現在の指標をチェックしておきたいと思います。
PBR,配当利回りの両面で割安状態がずっと続いています。配当利回りは一時16%近くまで跳ね上がりましたが。今は少し下がったものの14%台とかなり高い水準になっています。直近は稼働率が下がってしまっている、かつリポジショニング施策により一時的に工事などで稼働率がさらに下がること、金利コストとエネルギーコストの上昇を鑑みると、2023上期までは配当額がやや下がる可能性はあります。打開策が上手く進んでいるかの進捗、さらに稼働率などのファンダメンタルズを毎四半期で確認していくのが良さそうです。
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