東芝が売却破綻したWestinghouseがPEファンド再生後に79億ドルで売却。原発は脱ロシアの救世主となるのか。

Westinghouseと聞いて、「東芝が買収したのち、破綻した会社だ」と思い出す人も多いと思います。その会社が2022/10/11に79億ドルで売却されました。買収を行ったのはウラニウムのマイニング大手のカメコとブルックフィールド・リニューアブル・パートナーズです。今回売却したPEはブルックフィールドで、同グループ会社に51%、カメコに49%を売却する形で大幅な利益を上げることに成功しました。東芝が買収した際に目論でいたシナリオは福島の事故による世界的な反原発の潮流で脆くも崩れ去り、それが今になって、エネルギー危機に伴った原発回帰が起こり、瞬く間にブルックフィールドに多大な利益をもたらしました。(東芝は2006年当時54億ドルで買収し、2018年に1ドルでブルックフィールドに売却という散々な結果でした。)

カナダのウラン生産大手カメコとブルックフィールド・リニューアブル・パートナーズは11日、米原子力発電設備大手ウエスチングハウス(WH)を79億ドルで買収すると発表した。

買収額には負債も含まれており、負債を除いた株式価値は45億ドル。欧州のエネルギー危機や原油・天然ガス価格の高騰で原子力発電への関心が再び強まる中での買収となる。

10/27にWestinghouseを買収したCamecoの決算があり、Revenue,EPS,ガイダンスと全て大きくコンセンサスを上ブレし、ウラン市場は今までにないほどの活況であるとCEOはコメントしていました。Westinghouseが得意とするAP1000の原子炉は最先端の第3世代の原子炉で、中国でも多く稼働しています。実は米国では1979年のスリーマイル原発事故以降、新たな原発を建設しておらず、海外へ原発輸出する形で近年は実績を積んできました。中国にWestinghouseが建設した最新のAP1000基が複数あるのもそういった背景があります。

 

Westinghouseはロシアに依存するエネルギー源の脱却という観点からも、移管にあたっての最有力候補となっており、10/30にはポーランドの原発建設プロジェクト(400億ドル規模)にも選定されました。

Poland has chosen the U.S. government and Westinghouse to build the central European country’s first nuclear power plant, part of an effort to burn less coal and gain greater energy independence.

 

Poland is planning to spend $40 billion to build two nuclear power plants with three reactors each, the last one to be launched in 2043. The deal with the U.S. and Westinghouse is for the first three reactors of the Pomerania plant, which officials saying should start producing electricity in 2033.

 

ポーランドだけではなく、ウクライナもロシアからの侵攻が始まる前の2021年9月にWestinghouseと独占契約を締結しています。現在はロシアとの戦争でプロジェクトを進めるどころではありませんが、終息した際には再スタートを切ることでしょう。

 

ちなみに、Westinghouseを買収したCameco(ティッカー:CCJ)は買収のニュースで株価を大きく下げ、直近は買収後のボトムから10%程度戻している水準です。

 

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