【書評】バブルの歴史 エドワード・チャンセラー

投資を行う上で、群集心理の存在は切り離せないものです。その群集心理が行き過ぎた時にバブルは発生し、バブルはどの時代でも存在しています。そんなバブルについての歴史をまとめた一冊。

「太古の昔から現在に至るまでの投機の狂気について見事に調べ上げよく書かれた本である。今、株式市場に関与している人はもちろんのこと、これから乗り出そうと考えている人にとっても絶対に読むべきものだ」――ジョン・ケネス・ガルブレイス

狂気の投機史
人はなぜお金が絡むと愚行に走るのか?
「バブル」という人間の強欲と愚行と狂気を描いた古典!

バブルに伴う群集心理の理解は冷静な判断が求められる投資家にとって必須の知識です。ここ数年でもSPAC株やミーム株のバブル、ビットコインのバブルなどが起きました。有名なチューリップ・バブルについても、チューリップの球根をこんな価格で売買するなんてありえないよなーと誰もが思うはずです。頭ではわかっていても、バブルが起きている中にいると、なかなかその事象についての判断ができません。今まさに目の前で起きているドル高についてもバブルかのような急上昇のチャートを描いています。ここから何かのきっかけで円高に転換し、急降下していくのでしょうか。。

そういったバブルについての理解を深めるために、全9章(+序文&エピローグ)で構成されています。

  1. 序文:最後にやって来た者が悪魔の餌食になる
  2. 「バブルの世界」-金融投資の起源
  3. チェンジアリーの株式売買と1960年代のプロジェクトの時代
  4. 忘れ得ぬ許しがたい南海計画
  5. 黄金の見かけにだまされた1820年代の新興市場ブーム
  6. 迅速な交通手段 -1845年の鉄道ブーム時代
  7. 金メッキ時代 -だまされ、魔法にかけられ、悪魔にとりつかれた時代
  8. 新時代の終焉 -1929年の世界恐慌とその余波
  9. カウボーイキャピタリズム -ブレトンウッズからマイケル・ミルケンまで
  10. カミカゼ資本主義 -1980年代の日本のバブル経済
  11. エピローグ:ならず者の経済学者

どのエピソードもバブルになったきっかけの部分から崩壊までのプロセスの詳細が記載されています。海外の視点から見た日本のバブル経済についての章は私たち日本人にとっても馴染みのある話ですし、個人的には、ジャンクボンド市場を構築したマイケル・ミルケンの話あたりが一番興味深かったです。構成を見てわかる通り、古典的なエピソードが中心ですが、後半では現代ポートフォリオ理論やデリバティブの話など、今の金融市場に通ずるトピックも盛り込まれています。

メモ的に気になったポイントを以下リストすると、

  • リスクは本来善でも悪でもなく、単に正負のリワードの源泉にすぎない。上手に付き合えば利得をもたらすドライバーになる。
  • 投機は「市場の心理を予測する活動」。投機では「強欲」と「恐怖」をコントロールすることが要求される
  • 人は出来事の重要性を誇張する傾向がある。価格が上がることで新規参入者が増え、アウトサイダーに投機を促し、ポジティブフィードバックにより非合理的なレベルまで価格上昇しバブルが発生する。そして価格が下がり始めると理由もなくパニックに陥り、状況によって正当化できないほど下落する。
  • バブルは最後にやってきたものが餌食になる。人は自分は暴落を免れることができると盲信している。
  • 新しい産業やテクノロジーほど人々は潜在的利益を大きく見積もり投機バブルが起きやすい。(鉄道、自動車、ITなど)。投機による高揚感は放漫さの現れであることが多く、経済的な権力バランスが一つの国から別の国にシフトする時にも起きやすい。「今回は違う」という言葉は危険。
  • 300年間、投機の性質が変わらないのは人間の"強欲、恐怖"という本質が変わらないからである。
  • 価値というのは内在的なもので、常に変化する「世論と流行」によって決まる。例えば株価も本質的価値を反映したものではなく、流動性によって決まる。
  • 群衆は本質的に不安定で、均衡状態になることはなく、ダイナミクスに煽られて拡大したり縮小したりする。群衆が分散する時にパニックに陥ることが多く、それは脅威をもたらす危険度とは関係なく些細なことで発生することが多い。

 

上記ポイントだけをまとめてしまうとありきたりなモノになってしまいますが、それぞれの物語から"動き"を感じることができ、ストーリーを通してそれぞれの流れを把握できることが本書の一番の良い点だと思います。今読んで損のない書籍なので、ぜひ投資を行っている方は読んでみてください。

 

以前紹介した下記書籍でもバブルのロジックについて解説されていて、論点だけをさっと理解したいならばこちらのほうがまとまっています。

バブル関連の本では下記の「狂気とバブル」も有名です。*こちらは10/25までKindleキャンペーンで85%オフ中。

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レイ・ダリオ氏が株式市場のバブル度合いを判別する際の指標については下記の記事でまとめていますので、こちらも参考にしてみてください。