シンガポール・オーストラリア 「グリーン経済」協定締結

10月18日、シンガポールとオーストラリアが「グリーン経済」協定を締結しました。これにより、両国間でのグリーンセクター関連事業の関税減税・免税など、投資を促進する環境を整えます。事業としては、サステイナブル農業やグリーン輸送(両国の港間をnet-zero emissionで結ぶ海路)なども幅広く含まれ、代替タンパク質やリチウムバッテリーのリサイクルに関する共同研究など、テクノロジーに強いシンガポールと資源豊富なオーストラリアの両者の持ち味が活かされています。同日にシンガポール国立大学とオーストラリア原子力サイエンス&テック機構との間でメルボルンのリサーチ施設を使用しての共同研究も発表されています。

豪州、シンガポール両政府は、「グリーン経済」協定を締結することで合意した。気候変動分野の投資・ファイナンス・技術開発を後押しする。「両国のネットゼロ排出への移行支援と雇用創出につながる。グリーン分野の成長機会により、グリーン技術の開発・商業化が促される」と述べていた。

両国間でどのようなプロジェクトが走っているかというと、何とシンガポールとオーストラリア間を海底ケーブルでつなぎ、太陽光発電の電力を送るという壮大なものです。

オーストラリアのアルバニージー首相は、同国の北部準州からシンガポールまで海底ケーブルで太陽光発電の電力を送る「サン・ケーブル」プロジェクトに触れ、こうしたプロジェクトが「究極のウィンウィンだ」と訴えた。

この壮大なプロジェクトが発表された2019年当時の記事を見てみると、プロジェクト総額は200億ドルで、シンガポールの全電力の1/4に相当する規模に電力供給がなされる大事業のようです。

シンガポールは日本と同じく化石燃料資源がなく、ほぼ全てを輸入に頼っている国です。2019年当時とは比べものにならないぐらい天然ガス価格も上昇していますが、その当時から需要と価格の高騰に対する懸念を持ち、それに対する適切な対策を進めていたようです。

Suncable2キャプチャ

サン・ケーブルの計画では、州の環境面での了解を得ると、地域住民を対象としたコンサルテーションを2020年にも実施する予定。順調に進むと、2023年に事業に着工、2027年に電力供給を開始できるとしている。同事業により、約8000人の地域雇用を創出できる、としている。

おそらくコロナの影響でプロジェクトは遅延していると思われますが、当時の計画では2023年から着工し、2027年からの電力供給を目指しているようです。

サン・ケーブル社のDavid Griffin社長は「金融面については2023年に決めたい」と語っている。事業規模の大きさから、国際的な金融機関よるプロジェクトファイナンスか、あるいはグリーンボンドの発行で投資家資金を獲得することが考えられる。

グリーンセクター関連事業のファイナンス調達で話に出てくるグリーンボンドについてはこちらの記事で紹介しています。

このサン・ケーブルで使用する太陽光パネルは特殊な構造となっており、工場で事前に作成されたブロックを現地で組み立てることで、工期とコストの短縮が可能になるようです。このような工場作成・現地組立の方式(モジュール方式の設計)は最新の原子力発電施設の作成でも使われる手法です。

ユニークなのは、5B社製のプレ組み立て式の太陽光発電モジュールの活用だ。同モジュールは1ブロックが、幅5m、長さ16m(32モジュール)あるいは同20m(40モジュール)の大きさ。工場で事前に装備されたモジュールのブロックを、現地でつなぎ合わせる。2.1MWの発電設備の場合、62ブロックを3人の技術者が25日で、つなぎ合わせることができるという。工期とコストの短縮が可能になる。

自然資源の豊富なオーストラリアとの協定は、シンガポールの成長を大いに加速することになるでしょう。まさにWIN-WINの協定締結と言えそうです。