地熱発電のゲームチェンジャー: 中部電力がカナダ企業に出資

--2023/5/1 update-

中部電力も出資している地熱発電の新技術を開発しているEavor社ですが、その後順調にプロジェクトを進めており、2024年をめどにドイツで商用プロジェクトを開始するようです。

 

このクローズドループができれば、国立公園などの景観も損ねることなく地熱発電を実装できるため、規制面など日本で乗り越えなければならない障害はまだまだありますが、地熱発電促進に向けてのゲームチェンジャーとなりそうです。

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ロシアのウクライナ侵攻があって以降、エネルギー源の確保は国の安全保障と同義となっています。ロシア産原油や天然ガスへの制裁の影響で、エネルギー資源輸入国である日本はLNGの確保などに追われています。数少ない日本が持っているエネルギー資源の1つとして地熱発電があります。地熱資源のキャパシティは世界でもトップであり、有効活用できれば日本のエネルギー確保に大きく貢献できます。今回はその地熱発電に関する記事です。

中部電力は2022年10月14日、同社の100%子会社Chubu Electric Power Company Netherlandsを通じて、カナダの地熱技術開発企業であるEavor Technologies(以下、Eavor社)と同社の株式引受契約を締結したと発表した。今後、近日中にEavor社の株式を取得する。

 Eavor社は「クローズドループ地熱利用技術」の研究・開発を行い、商業化を目指す2017年創業のスタートアップ企業。この技術は地下にループを形成し、地上から水などを循環させることで地下の熱を回収する技術。Eavor社は地上と地下約数千メートルをつなぐ網目状のループを掘削し、その中で水を循環させることで水を介して地下の熱を取り出す方式を採用している。

 地下の熱水や蒸気が十分に得られない地域でも効率的に熱を取り出すことが可能であることから、幅広いエリアでの開発が可能であり、掘削後に地下の熱水や蒸気の不足により開発が中止となるリスクを回避できるメリットがあるという。

この発電のすごいところは再生可能エネルギーの課題である低需要時・高需要時の調整ができ、どちらの場面でも活用できるところです。

この本技術を活用した発電は、ベースロード運転だけではなく、低需要時に地下に蓄熱し、高需要時に蓄熱したエネルギーを電力に変換する負荷追従型の調整力電源としての機能も備える。これらのことから、将来的にエネルギー業界のゲームチェンジャーとなることが期待されているという。

地熱発電が可能なエリアは温泉街や国立公園内に多く、自治体や政府との調整ハードルが高く、なかなか施設数が伸びていません。ぜひこういう投資が増え、地熱発電がもっとメジャーになっていければよいなと思います。ここの背景については真山仁さんの「マグマ」という小説でも詳細が記載されています。(たしか、Wowowで尾野真千子さん主演でドラマ化もされていました。Amazon primeに登録されているかたは、ぜひそちらもチェックしてみてください。)