誰にでもどんな組織にでも失敗はあります。その失敗を改善につなげていけるような体制・思考プロセスができているかという点について事例を用いながら紹介している本です。表紙に「小説のように面白い」と記載がある通り、興味深い実例が多く記載されているため、ページ数が多いにも関わらずあっという間に読めます。仕事や投資においても、上手くいかないケースがありますが、その時に活かせるような考え方ができます。
<コンテンツ>
- 失敗のマネジメント
- 「ありえない」失敗が起きた時、人はどう反応するか
- 「完璧な集中」こそが事故を招く
- すべては「仮説」にすぎない
- 人はウソを隠すのではなく信じ込む
- その「努力」が判断を鈍らせる
- 過去は「事後的」に編集される
- 「単純化の罠」から脱出せよ
- 考えるな、間違えろ
- 「物語」が人を欺く
- 難問はまず切り刻め
- 「一発逆転」より「百発逆転」
- 「犯人探し」バイアスとの闘い
- 脳に組み込まれた「非難」のプログラム
- 「魔女狩り」症候群
- 究極の成果をもたらすマインドセット
- 誰でも。いつからでも能力は伸ばすことができる
- 失敗と人類の進化
- 失敗は「厄災」ではない
これらのコンテンツ題目をみただけでも、興味を引くものが多いですが、特に印象に残っているものをあげると、
- ミスに対するフィードバックを行い、「オープン・ループ」のオペレーションを回すことで学習の機会や進化がもたらされる。失敗を隠蔽せず「データの山」と捉え、失敗から学ぶことが最も効率的な手段と考える。失敗の捉え方を変えない限り、パフォーマンスの改革は幻のままに終わる。
- 人間は一度意見を決めると、何事もその意見を支持するものとして捉えてしまう。たとえその向こうに数々の反証が存在していても、見て見ぬ振りをして受け入れず、有害な固定観念でもとの解釈を維持してしまう。
- 進化とは選択の繰り返し。失敗から学ぶには①適切なシステムと②マインドセットの2つの要素がカギ。自由市場のシステムは失敗が多いからこそうまくいく。(例:自然淘汰である企業の倒産は進化のプロセスに不可欠な結果。)テクノロジーの進歩の裏には論理的知識と実践的知識の両方が複雑に交差し合いながら前進を支えている。トップダウン式で考えるのは楽であるため、反復作業が多く面倒なボトムアップ式の前進を我々はついおろそかにしがち。量にフォーカスし、試行錯誤を繰りかえす。大きなゴールを小さく分解し、一つひとつ改善して積み重ねていけば大きく前進できる。ランダム化比較試験(RCT)を実施し検証を行うことで何が有効かを見極める。
- 失敗から学べる人と学べない人の違いは失敗の受け止め方の違い。成長型マインドセットの人は失敗を自分の成長に欠かせないものとして自然に受け入れる。一方、固定型マインドセットの人は失敗を「自分に才能がない証拠」と受け止め、自分の能力を過小評価し、失敗を自分の「知性」のせいにする。
- 知性や体力よりも「やり抜く力」のほうが大切。この力は成長型マインドセットと密接に関連している。互いの挑戦を称え合おう。自分の考えや行動が間違っていると指摘されることはありがたいこと。そのおかげで、間違いが大きければ大きいほど大きな進歩を遂げられる。
実例や様々なテストの検証結果を交えて構成されているので、コンテンツを見てより興味をもった方や、最近何か失敗したなぁと感じた方がいれば、ぜひ一読してみてください。魔女狩りなど怖いエピソードもありますが、自分の「失敗」に対して前向きになれます。