個人投資家 テスタさん x 井村さん 対談①

有名個人投資家のテスタさんと井村さんの対談企画がアップされていました。実際の銘柄例を挙げてどのような判断で売買を行ったのかという点を中心に内容の濃いものとなっています。

特に興味深かった内容をいくつか抜粋したいと思います。

 

テスタさんが海運株の川崎汽船を買った際の判断材料は

僕が大事だと思ったのは、「逆転」。「日本郵船と商船三井は高配当株だけど、川崎汽船だけはそうじゃない」と思われていた。ところが1000億円の株主還元策で、川崎汽船の評価が3社の中で逆転して最上位になる可能性が出てきたんですね。株というのは、赤字企業が黒字になった時など逆転したときとか、評価が真逆になったときにすごく株価が伸びたりする。3社の中で逆転現象が起きるのではないかなと思ったのが、強く買う理由になりました。

さらに日本郵船を信用売りすることでロング・ショートのペアトレードでリスクを抑えながら取引を行っていたことに井村さんも驚いていました。

海運の中で川崎汽船の期待値が高いと思うなら、川崎汽船だけドカッと買えばいいじゃんと普通思いますよね。でも、日本株全体や海運業界全体が売られると、川崎汽船の株価も上がらないかもしれない。テスタさんはそういうマーケットリスクを極力取りたくないので、川崎汽船をロング(買い)で入る分、日本郵船にはショート(売り)を入れた。そうすることで、マーケットリスクにさらされている量を減らし、川崎汽船固有のアップサイド(※)だけ取り行こうという戦略ですね。これはヘッジファンドがよくやっている「ロング・ショート戦略」という手法です。

さらに、川崎汽船を買い増ししたタイミングとして、決算を跨いだ際の値動きについても言及しています。

でも井村くんみたいな賢い人が長い時間考えた結果が、次の日の株価に出る。だから決算発表の次の日に強かったら買い増ししようって考えるし。実際、川崎汽船も翌日確信的に大きく買い増ししたしね。翌日一番強かったのが川崎汽船だったから。

海運3銘柄は決算発表を挟んで大きな動きをすることが多く、かつ普段は3銘柄は似たような動きをすることが多い。でも、今回はほぼ同時に決算が出た川崎汽船と日本郵船は発表後の値動きが真逆だった。普段連動するはずのものが真逆に動いたから、というのが川崎汽船を買った理由として一番大きかったです。

 

さらに話題は井村さんの三井松島の銘柄について。

 

投資を行った一番の判断材料は資源価格の上昇。SDGs・脱炭素により長期的に資源価格が上がることが見えていた。石炭価格が上がる中で三井松島は価格が横ばいで取り残されていたため割安であったと判断したようです。大量保有報告書が出た直後は

直後は商いが激しくなりプレミアムが一瞬ついたかもしれませんが、あっという間に空売りで叩かれディスカウントされた。石炭価格の高騰で、世界の石炭株の多くは年初から50%くらいは上がっていましたし、2倍になっていた銘柄もあった。それに対して三井松島は、決算が出るまで年初からほぼ横ばい。強引な空売りで頭を抑えられていた印象です。

決算発表時は複数シナリオを想定していた点と、信用買い残の需給についてもコメントしていました。

あくまで推測ですが、機械的に「アルゴトレード」(プログラムに従った自動売買)をするヘッジファンドもいると思っていて。三井松島は信用買い残(信用取引での買い残高)が多い。信用買い残は投資家の握力(持ち続ける力)が弱い玉なので、「少し株価が下がると投資家が売ってくるから株価を崩しやすい」と思われているのかもしれない。発行済み株式数に対する信用買い残が多い銘柄や、出来高に対する割合が多い銘柄を機械的に売ってくるアルゴがいるのではないかなと。

売りタイミングは「買い材料が世間に認知され、バリュエーションに全て反映されαがなくなった時」に売る。三井松島については化石燃料の重要性以外にももう一つαがあるとみているようです。