【銘柄分析】CapitaLand Ascott Trust :シンガポールのホテル系最大リート

--2023/3/14更新--

シンガポールリートのHospitality系で最大のREITであるCapitaLand Ascott Trust。シンガポールを中心に15ヵ国47都市に物件を保持しています。

2006年のIPO以降、コロナ禍も乗り越え、着実に規模を拡大し、総資産はS$8.0 Bまで拡大しています。

 

ホテル系REITではMasterLease Contractで固定で収入を得る部分と、ホテル稼働率などの実績に応じた変動収入の割合が重要です。固定部分の割合が多い場合は安定している一方、好業績時(Afterコロナのリオープニング時の活況など)のアップサイド利点が減ってしまうことにもなります。

AscottはFY2022実績でGross Incomeの59%はMaster Leaseや長期滞在型物件で安定的な利益を確保しています。ポートフォリオの地域分散も進めており、メインのAsiaが60%,拡大を進めている USAが21%, ヨーロッパが19%となっています。コロナ禍で安定収益の柱として戦略的に拡大していた学生寮(Student Accomodation)はポートフォリオの12%を占める水準まで来ています。

直近FY2022 2Hの実績を確認していきましょう。

RevはYoYで+69%,DPS(配当額)は+47% と大きく成長し、Afterコロナに相応しい実績をあげています。FY2022 年間トータルでも前年比でRev +58%, DPS +31%となっています。 長期契約物件比率は19%と、2021年の16%から3pt増加しています。一部オフィスREITなどで問題となっているポートフォリオの不動産価値については、評価額は+2%増と堅調なポートフォリオを維持しています。

契約タイプ別で見ても、全てのタイプでRevenue,Gross Profit, RevPAU(客室あたり売上単価)が伸びていることがわかります。

利益が大きく向上した要因としてRevPAUが大きく改善していることが上げられます。ホテルは他セクターの物件と違い、直近のインフレを宿泊費に素早く反映させることができるため、客室単価が2022 2HでYoY +81%と大きく上昇しています。さらにシンガポールのリオープニングにより観光客数も大きく回復したことで追い風が吹いています。

 

<ポートフォリオ>

FY2022実績パートで掲載した上記スライドがポートフォリオの全体感をよく表しており、地域別ではAsia 60%, USA 21%, Europe 19%と分散されています。種別では、ホテルが32%, 学生寮が12%, 賃貸住居6%, サービスレジデンス(滞在型ホテル)が50%となっています。

Gross Profitでの契約種別についてはFY2022 2Hでは半分以上の52%が安定的な収益(Master Leasesなど)からのものとなっています。

ポートフォリオ戦略上も、安定的な収益を維持するための適切な分散を謳っており、アジア・欧米の地域分散、さらにAsset Class別では、長期滞在型物件などの安定収入を25-30%, 旅行需要など変動収入で成長を取っていくものが70-75%の配分を投資指針としていきます。

 

ポートフォリオの物件組み替え(物件取得と売却)もこの3年間で非常に上手く行っています。

いくつか例を挙げると、下記のようなものがあります。

またFY2023年度は多くのホテルのリノベーションも計画しています。

<財務状況>

金利上昇時に懸念されるレバレッジについてもGearign 38%と低水準で抑えており、借入コストも1.8%と低い水準となっています。シンガポール国外物件の増加により、外国為替も52%ヘッジされており、為替差損の影響を軽減しています。

金利上昇への耐性として、固定金利比率を2022年末時点で78%まで引き上げています。さらに、平均借入金利が1.8%と低い水準に抑えることができている理由として、日本円建でのサステイナブル債を活用するなども行っています。

 

Asset Class (ホテル & 住宅)や投資するエリア(アジア & 欧米)について上手く分散が進んでおり、バランスの取れたポートフォリオ運営を行っています。財務状況も健全で、コロナ禍を乗り越え、より強固な基盤を築いたREITといえます。