CO2を90%回収しつつ世界最高効率 “究極”石炭火力発電の実証試験が最終段階に

昨今の原油・天然ガス価格高騰をきっかけに、エネルギーに関する記事をみかける機会も増えてきました。エネルギーは環境問題のみならず国家の安全保障にも関わる重要な分野です。脱炭素化など再生エネルギーに関する声は日に日に大きくなっていますが、全ての発電を再生エネルギー経由にするのは簡単ではなく、化石燃料での発電を併用した移行期間が必ず必要になってきます。そんななか、化石燃料を使用していても脱炭素に寄与できる石炭火力発電の実証実験が現在進んでいます。

NEDOと大崎クールジェン(株)は、革新的な低炭素石炭火力発電技術の確立を目指す「大崎クールジェンプロジェクト」の第3段階に入りました。具体的には、CO2分離・回収型酸素吹石炭ガス化複合発電(CO2分離・回収型酸素吹IGCC)設備に、MW(メガワット)級の燃料電池設備(SOFC)を組み込んだCO2分離・回収型石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)の実証試験を、4月18日に開始しました。

本実証試験では、第2段階のCO2分離・回収型酸素吹IGCC実証設備に燃料電池を組み合わせて、石炭をガス化したガスからCO2を分離・回収後、得られる高濃度水素ガスを燃料電池に供給し、燃料電池の発電特性や燃料電池内部の温度分布を把握します。また、燃料電池モジュールを並列運転した時の運用性、さらに高圧運転した場合の挙動を調べるなど、CO2分離・回収型IGFCシステムの実現に向けた試験を行います。

実証試験の目標は、本実証試験の成果を500MW級の商用機に適用した場合に、CO2回収率90%の条件で47%程度の送電端効率(高位発熱量基準)の見通しを得ることとします。

今後、高効率な石炭火力発電とCO2分離・回収が両立する技術を確立し、CO2排出量抑制(地球温暖化対策)への貢献を目指します。

石炭火力発電CO2を90%回収しつつ発電効率は47%(通常の石炭火力発電+15%)と驚異的な数値です。その理由は①ガス化した際のガスタービン②排熱を利用した蒸気タービン の2段階で発電を行うことができるためです。

IGCCプラントの仕組みについてはこちらのサイトがよくまとまっています。

国際的に「石炭火力発電」という響きだけで、脱炭素と逆光するようなイメージを持ち、投資を抑制することにつながってしまうリスクもありますが、そこで下記の記事のように「実質的に水素発電」だというように唱える見方もあります。

日本には石油や石炭・天然ガスのような資源はありませんが、IGCCのように効率化を進める技術での貢献や、豊富にある地熱エネルギーといった再生エネルギーを開発していくことで世界的なエネルギー問題の解決にもつなげていくことができるのではないでしょうか。